【02】牧場襲撃から約2時間後、ヒットザターゲットはサポロ・ウインズの巨大な窓ガラスに手をつき、今にも倒れそうに
なるのを必死に堪えていた。
メンコの下の身体はひどく傷ついており、消耗していた。先程のキョーソウバとのレースによるダメージではない、
その前の爆発によるダメージだ。その時まで彼はキョーソウバではなく、ただのウマだったのだから。
彼は混濁する記憶を呼び覚まそうとした。そう、彼はあの爆発で記憶を失っていたのだ。
「だこー」
彼は呟いた。その名を呼ぶと記憶が微かに蘇り、像を結んだ。
「だこー」
あの場所に、既に姿は無かったが、彼の親友の名だった。
記憶が少しずつ逆流してくる。
「ヒットザターゲット」
彼は己の名を呟いた。忘れぬように。
「私はヒットザターゲットだ」
「そのとおり。」嗄れた声が頭の中に直接答えてきた。ヒットザターゲットはハッとして顔を上げた。
目の前にある巨大な窓ガラスに目をやると、そこには漆黒のキョーソウバらしき姿が
おぼろげに映し出されていた。
「ドーモ、ヒットザターゲット=サン。
キズナ・ウマソウルです。」窓に映る者が言う。ヒットザターゲットは訝しんだ。
「ドーモ、キズナ・ウマソウル=サン・・・一体、貴方は・・・」
ヒットザターゲットは震えた。
「キョーソウバ・・・?」
「さよう。キョーソウバだ。」
窓に映る者は得意気に鼻を鳴らし答える。
「キョーソウバを追い抜くキョーソウバだ。」キズナは言った。ジゴクめいた、慈悲無き声音だ。
「ワシと共に復讐を果たすべし。」
彼のメンコの真っ赤なクロスが傷のように疼く。
「キョーソウバ、追い抜くべし。」
「そうだ・・・キョーソウバが牧場を・・・だこーを・・・」
「さよう。キョーソウバが全てを奪った。オヌシ自身も死の淵にあったが、ワシが繋ぎとめた。」
「・・・」
「キズナだけに繋ぎとめたのだ。」何やら得意気に言うキズナの話を、ヒットザターゲットはただただ呆然と聞いていた。
「キズナだけに繋ぎとめたのだ。」ヒットザターゲットは反応できなかった。
窓に映る者の存在を未だに理解しきれていなかったからだ。
「ワシがオヌシを救ったのだ、復讐の機会を与えるために!」
その邪悪な幻影の目が点のように凝縮し、審議の青ランプめいて燃焼している。
「復讐」
ヒットザターゲットが呟いた。今は彼が何者かよりも、牧場を襲ったキョーソウバへの憎しみの方が
実際大きい。
「キョーソウバを追い抜く・・・できるのか、そんなことが。」
「できる」
キズナは低く言った。
「オヌシはワシだ。キョーソウバを追い抜くキョーソウバだ。
望みを果たせ、ヒットザターゲット!」
「復讐!!」
「そのとおり!ワシに任せよ、追い抜くのだ!!」たちまち先のレースの記憶が蘇った。
私はたった今、2頭のキョーソウバを追い抜いてきたではないか。
黄色と黒のストライプのエンブレム!あの2頭の胸にあったエンブレムがくっきりと思い出された!
故郷と友を奪った憎むべき集団!自らを絶対強者と信じて疑わぬ者達を、逆に恐怖のどん底に
叩き落とし、蹂躙する・・・なんと心地よい体験だった事だろう!!
雷鳴が轟き、にわかに雨が降り始めた。
ヒットザターゲットは己の蹄を見つめた。そしてウインズのガラスを見た。そして、ガラスに映る
クロス・メンコのキョーソウバが自分自身であると理解した。
彼は、キョーソウバは追い抜くキョーソウバとなったのだ・・・
ウマスレイヤーに!!
「イヤーッ!」ヒットザターゲットはキックを繰り出しウインズの窓ガラスを蹴り割った。
ウインズの警報音がけたたましく鳴り響く。
「アイエエエ!キョーソウバ!?キョーソウバナンデ!?」通りすがりのカイバ配達員が行いを目撃し、トラクターを転倒させた。
重篤なKRS(キョーソウバ・リアリティ・ショック)だ、世間一般ではキョーソウバは存在すべき場所が限られており、
ありえない場所で唐突にキョーソウバに遭遇するとバケンを外した時の記憶が堰を切って押し寄せ正気を失う!
路上には束になったカイバが散乱した。
ヒットザターゲットは、その内の一つを抱え込み、その場から消え去った。
そう、この時既に彼は新たな刺客の気配を察していたのだ!
二足走行モードに切り替え、ヒットザターゲットは走りながら先程のカイバを次々に口に放り込んでいた。
カイバにはキョーソウバに必要不可欠なエネルギーが含まれている。
完全栄養食として重宝されるカイバは、キョーソウバだけでなくモータルの間でも人気が高く、
特に安価で大量生産可能なバイオ・カイバはこの世界には必要不可欠な存在だ。
天然素材を用いたオーガニック・カイバは非常に高価な為、余程のカチグミでないと手に入れることが
できない。
「カイバ。体力回復にはまずコレやね。ええもん持ってる。」と、
かの名人アンドー・サシミの言葉にもある。ハイウェイを疾走しながら南下する彼にはもう解っていた。
「つけられている」
背後から新たなキョーソウバが接近している。
そのキョーソウバは先を行くヒットザターゲットを静かに分析しながら間合いを詰めていた。
牧場襲撃の最中、そのキョーソウバはやや離れた位置に待機し、周辺区域をモニタリングしていた。
万が一の事態に備える為だ、いくらサンシタとは言えしくじりを犯すわけもなかろうが、古いコトワザに
「ノーレンにラリアット」という言葉もある。
しかして、その万が一の事態が起こってしまった。
彼はケツァルテナンゴとアッシュゴールドが掲示板から消失したのを確認し、そこに新たに1着表示された
キョーソウバの存在を確認していたのだ。
そして今、彼はヒットザターゲットの姿を捕捉した。
彼のブリンカ・スカウタがヒットザターゲットのステータス表示を高速で展開する。
ピーピピピ ピーピピピ
チチーッチッチッチ
カチカチカチカチカチカチカチカチ
ポポポポポポポポポポ
フュイーン ピピピピピ
ピー!
『カイバ』
『カイバ補給中な』
『カイバを食べている』分析結果にキョーソウバが唸る。
「さては手負いか!!」今まさにカイバで体力回復を図っていることを冷静沈着に割り出した!
仕掛けるなら今だ!
「休む暇など与えぬぞ!」ここぞとキョーソウバは加速、ヒットザターゲットに追いつく!!
~つづく~
★おまけ常連ヘッズの「通りすがりの馬主さん」が描いてくれました。
ありがたうございます!!
※クリックで原寸大
いやぁ、居るものですね!!
バカな人って!!(究極的にホメてるつもりです)
http://tiltowait0hit.blog.fc2.com/blog-entry-966.htmlウマスレイヤー 02
俺「・・・(シャコーッ シャコーッ)」
弟子「なんで包丁なんか研いでるんですか、おっかない。」
俺「ユタカさんのちん○んをちょん切ろうと思いましてね・・・」弟「そんなコトしちゃダメです!!」帝王賞 結果
1着 ホッコータルマエ
→ 俺◎弟子○2着 クリソライト
→ (゚∀゚)3着 ハッピースプリント
→ 俺◎弟子▲4着 ユーロビート
→ 俺▲俺「マジかー・・・
クリソライトマジかー・・・」
弟「
ホッコータルマエとのマッチレースになりましたね、ユタカさん!!」
俺「いや、もう悔しいって感じじゃなくて見事としか。このタイムで残せるかー、そうかー・・・」
弟「ここまでクリソライトがタルマエと接戦を演じられるとは思ってなかったです。」
俺「スゲー恥ずかしいけど告白する、
中央馬の中で真っ先に切りました。」
弟「ぶっ・・・」
俺「正直速力には乏しいって思ってたし、ここ最近のレースでダイオライト記念は勝っているものの相手関係が全然違うでしょ?
かしわ記念では明確な着差付けられてて、東京大賞典でも見せ場無くて・・・ハッキリ言ってなんでこんな人気なんだろうって
思ってたんだよ。」
弟「まぁ確かに。」
俺「トーセンアレスに印打ててもクリソライトには打てない・・・」
弟「そこまで自信持っての切り判断だったのか・・・」俺「そのクリソライトにこうも見事に予想割られたら参ったとしか言えないって。」
弟「ホッコータルマエは遠征戻りの不安も何のそのでしたが。」
俺「序盤が結構ハイペースだっただけにタイムは結構速くなった。末脚に劣る分、道中での根比べに持ち込んだんだ。結果知った
後にレース見たけど、本当によく残したなって感じ。リアルタイムで見てたら多分
『クリノスターオー潰しご苦労』とかって余裕
こきながら、直線で口ポカーンって開けちゃってただろーなぁ・・・」
弟「さすがはユタカさんなのです!!」
俺「俺のマクを守る悪い子はちん○ん切ってやる。」
弟「ちん○ん切ったら逆にマク破ってもらえないよ。」俺「・・・かしこいな。」
弟「うれしくねぇ・・・」
俺「
ハッピースプリントも頑張ったけどなー。直線へ向かう時のコーナリングの手応えは抜群だった、やっぱ直線の前で先頭に
並びたいよね。」
弟「でも、このメンツ相手に大健闘ですよ!!」
俺「期待の膨らむ3着だったね!!次こそはって感じがしたし!!」
弟「そして
ユーロビートが4着と。なんつーか、師匠が狙ったレースはしていたんですけどね。」
俺「結局は先行した中央組がそんだけ脱落する流れだったワケだ。前2頭はスタミナがスゴイってことだと思うよ。それにしても
ホッコータルマエはすごい馬だね、ドバイ遠征組に振りかかっていた呪いみたいなものは、全く関係無かったな。」
弟「G1レース9勝目だって!!スゴイね!!」
俺「現状で最多タイだろ。これを越えるか、はたまた若い力がそれを阻止するか。」
弟「おめでたう!!やっぱり大横綱だ!!」
俺「おめでたう、ホッコータルマエ&ナイスガイ!!」弟「しかし皆様、お上手ですよね。」
俺「何が?」
弟「師匠が真っ先に切ったクリソライトを本命や対抗にして、読者さん達が結構当ててますよ。」
俺「ニコフさんとざくろさんが当ててたな。あとドスケベさんも。」
弟「ちん○んちょん切るならコイツらでしょ。」俺「昨日はイジってあげるって言ったり、お前も大変だね・・・」弟「イジってなんかあげませんから。」
俺「誰も期待してませんから・・・」
弟「さて、これで週末に向かうワケですけども・・・どうします?」
俺「宝塚記念かー・・・」
弟「昨年は前倒しで予想しましたけどね。今週末も例の流れになりますからね、更新なんかできませんよ。」
俺「まだ枠も決まってないんだけど、今の内にやっちゃうか。」
弟「全く気乗りしませんね。」俺「やりたいのか、やりたくないのか、どっちだ。」★気乗りしないまま宝塚記念前倒し予想俺「
ヒットくん居ないし。こうなると
ゴールドシップの三連覇が最大の焦点になるよね。」
弟「やっちゃってくれちゃうんじゃなかろうか。」
俺「本命か。」
弟「本命です。」
俺&弟子◎ゴールドシップ俺「以上をもちまして、宝塚記念
予想を終了致します。」
弟「沈没しちゃうよおおおお!!」俺「だってさぁ、他の部分はまだ考えてもいないんだぞ。」
弟「その時点で本命だけは師匠と一緒だなんて、そこから先を考える気が失せます。」
俺「馬場だってどうなるか。週末天気悪そうじゃん、例え日曜に雨が降らなくても金土と雨予報だからねぇ。」
弟「例えば、なんですけど。」
俺「んー?」
弟「天皇賞の時みたいな
ゴールドシップ論は今回だとどうなるんですか。」
俺「そうなのよ、そこが不安ではあるのよ・・・」
弟「む、今回は不安な方向になるのか。それでも本命ってコトは来ないかもしれない・・・」
俺「ベルラップ故障しちゃって放牧中だろ・・・」
弟「また出たベルラップちゃん!!」俺「なんかノリさんが、この宝塚記念のゴールドシップの調教で手綱取って、
『久しぶりにお利口さんだったね』って言ってたん
だろ?コレ結構
イヤな予感するんだよ。」
弟「おりこうなのはよいことです。」
俺「お利口なんじゃなくて、おとなしいってだけだったら負ける時のゴールドシップだぞ。」
弟「ふぇ!?」
俺「今までのレース、ゲート入り前に妙なおとなしさを感じたゴールドシップってあまりイイ結果残した印象無いもん。」
弟「なんか解らなくもないですね、問題児っぷりが目立ってきてからは。」
俺「凱旋門賞の時とかスゲーおとなしかった。」
弟「あう・・・」
俺「要は気が入ってない感じになっちゃうんだよな、落ち着いてるんじゃなくて。レースに対して上の空になってるっつーか。負け
てもどーでもいーやーってテンションなのかもしれないんだ。」
弟「その、おとなしいゴールドシップとベルラップに何の関係が?」
俺「そのまんまだよ、小生意気な後輩が隣から
居なくなって張り合いが無いのかも。」
弟「!!!!!!!!!!!!!!!」俺「思えばAJCC、
ジャスタウェイが隣の馬房から居なくなってしまったゴールドシップはらしさも出せずに沈んだだろう?同じ様な
ことが起きてしまうかもしれないんだ。」
弟「なんだろう、ゴールドシップってそういうイメージ膨らませてくれるよね・・・」
俺「結構な寂しがり屋さんなのかもしれないのだ。一番の不安点だな。」
弟「天皇賞の時がしっくり来すぎてて、そう言われると怖くなってきた。」
俺「こうなってしまっては馬場が合ってようが調子が良かろうが走らなくなる、それがゴールドシップだ。」
弟「でも本命なんだね・・・」
俺「ベルラップとジャスタウェイじゃ重みが違うからなぁ。」
弟「なんかかわいそうなんですけど、ベルラップちゃん。」俺「不安は大きいけど、ここまで来たら3連覇を望みたいんでね。予想っつーより応援だ。」
弟「正直なトコロ、それが大きいですよね。」
俺「あとは馬場次第だけど、個人的にはパッと見で大波乱にはならないんじゃないかと。例えゴールドシップが着外に消えても
人気どころの決着になるんじゃないかね。」
弟「へ!?なんか意外。師匠のことだから、こういうメンバーでのレースとなるとかなり意外なトコに印打ってきそうだって思って
いたんだけど。」
俺「ぶっちゃけ
ラブリーデイと
ヌーヴォレコルトと
ラキシスは、馬場が荒れようがどんな枠に入ろうが上位に絡んでくると思うのよ。
4歳は疑ってかかっちゃおうかなって感じ。馬場が良ければ前残りで
カレンミロティックも面白い。オッズは割れそうだけど、
いつもみたいに極端な穴馬で目を引く存在は居ないかなぁ。」
弟「上位拮抗って見方ですか・・・」
俺「どぉせ見れねぇんだし、こんな
感じでいいだろ。」
弟「結論、フテ腐れてます。」俺「買うときはツイッターで買い目つぶやきまーす。」
弟「それで今週も週末更新ナシと。」
俺「明日は更新するよ。」
弟「・・・じゃあなんで今日、宝塚記念の予想したんですか。」
俺「いや、明日は対談できねーって。飲み会だもん。」
弟「そうだった。じゃあ更新って?」
俺「ウマスレイヤー置いてくから。」
弟「ウマスレイヤー・・・」俺「ここから先、しばらく
週末はウマスレイヤーになります。」
弟「競馬ブログに週末来ると、そこに置かれているのがウマスレイヤーなのか・・・」
俺「予想を見に来たら、そこにあるのはウマスレイヤー。」弟「なんか最低ですね・・・」※では、ウマスレイヤーでお会いしましょう
http://tiltowait0hit.blog.fc2.com/blog-entry-965.html宝塚記念の予想【雑】