秋のマモノ、屈腱炎を知ろう

★前回までの流れは水に流して・・・

俺「うーむ・・・」
弟子「うーん・・・」


シリウスS勝者マスクゾロ、繋靭帯炎発症で半年以上の休養
ココロノアイ、屈腱炎発症で引退
ベルカント引退
秋華賞最有力候補、樫の女王シンハライト、屈腱炎を発症 復帰まで最低1年



俺「なんだこりゃ・・・」
弟「何が起きている・・・」



俺「たった2,3日で重賞ウイナーがこれだけ戦線離脱するとは。」
弟「ベルカントは故障が原因の引退ではないですけどね。こないだのスプリンターズSがラストランになったんだ。」
俺「マスクゾロはこの秋の台風の目になるかもしれない一頭だったんだけどなー。」
弟「世代交代の流れができつつあるダート戦線の中で重要なポジションに付いたのにねぇ。」
俺「ココロノアイも夏場に復調の兆しを見せていただけにもったいない。」
弟「でも、他の馬には申し訳ないけれど、何より驚かされたのがシンハライトですよ・・・」
俺「この一族はなぁ・・・兄のアダムスピーク、アダムスブリッジが右前の屈腱炎、シンハライトが左前の屈腱炎と体質が弱い部分
  があるみたいだけど・・・こないだ姉のリラヴァティも、屈腱炎ではないけど怪我が原因で引退してるし・・・」
弟「悲運の血脈なんですね。」
俺「こういう血筋を感じさせる故障のニュースは心苦しいよ。でも実際にそれっぽいことは他にもあるからなぁ。」
弟「コディーノチェッキーノの兄妹も、病気は違えどって感じがしますもんねぇ。」
俺「レーヴドスカー一族も似たようなものだよ、故障さえしなければ、病気にさえならなければって産駒だらけだ。」
弟「レーヴァテインも屈腱炎なんでしたっけ?」
俺「そうなんだよねぇ。この兄弟で元気なのって、サボり癖があるレーヴミストラルぐらいじゃないのか。」
弟「なんというか、最近キャロットファームの一流馬に屈腱炎が多い気がします。こないだリオンディーズが発症したばかりだし、
  ハープスタートゥザワールドクルミナルもそれで引退になってしまったし・・・」
俺「そのイメージはあるなー、特に今回のリオンディーズ、シンハライトの立て続けの発症は残念感ハンパないよ。」
弟「イヤですねぇ、屈腱炎って。凄く長引くし。」
俺「不治の病として競馬ファンの間で恐れられている病気ではあるが、果たしてどんな病なのか。そして、それがどうして起きる
  のか、どうしたら防げるのか。そこを解ってる人となると少ないんじゃないかな。」
弟「まぁ、確かにね。」
俺「これは理解しておく必要があるよな、競馬ファンとして。」
弟「ふむ。」
俺「・・・っと、その前にもう一頭引退してしまう馬がいるのか・・・」
弟「えええええ、まだこの流れが続いてしまうのですか!?イヤだよぉ!!」
俺「・・・」
弟「どの子なのですか?」


大穴の女王ミナレット、モンテロッソの仔を受胎しました(登録抹消前に)


俺「お、おめでたうございます・・・でいいのかな・・・?」
弟「おめでたうございます!!」




★屈腱炎ってどんな病気?

俺「原因によく挙げられるのが高速馬場。これが馬の浅指屈筋腱、すなわちヒトで言うところのアキレス腱にダメージを与えて
  しまい、その部分の筋繊維の一部が切れたりして出血し炎症を起こすのが屈腱炎だ。断裂とは違う。」
弟「むつかしいなぁ・・・」

俺「平たく言えばヒドい捻挫みたいな状態だ。」
弟「むつかしくなくなった。」


俺「アキレス腱とは言ったけど、屈腱炎を発症するのは大体前足。正確に人体で言うなら手首の腱、あるいは掌の腱か。」
弟「まぁ馬の場合は全部脚ですからね。」
俺「でも屈腱炎は脚をくじいたり、ヒネったりして起こる病気じゃないんだよ。ヒトの捻挫はそれで起こるんだけど。」
弟「高速馬場走行により腱にかかる高負荷が原因ってことか。」
俺「そう考えると辻褄が合うけれど、どうやら違うらしい。」
弟「ほえ?」
俺「直接的に関わるかと言えばNOだというのが正解みたいだね。」
弟「どういうことでしょう。」
俺「いきなり発症するワケではないんだって。」
弟「は!?」

俺「ヒトの捻挫は足をくじいたりしていきなりなるものだけど、屈腱炎ってのはそうじゃない。高負荷によるダメージの蓄積と期間が
  主な原因
と言われている。だから、高速馬場を走ったからと言っていきなり発症するものじゃないんだって。」
弟「蓄積疲労ってヤツなんですね、徐々に進行する病気ってことか・・・」
俺「その状態が屈腱炎に至る前に、腱の繊維が変異した状態になるらしいんだ。」
弟「それって・・・つまり前兆があるということ?」
俺「うん。でも解らないんだよ、それが。」
弟「よくエコーとか言うけど、あれってしょっちゅうやってるんじゃないの?一流馬なら尚更だよ。」
俺「超音波診断な。そりゃやってるだろうけど、それでも前兆は把握できないんだ。」
弟「それじゃ前兆って言えないじゃん。」
俺「そうなんだよねぇ、細胞が変化しちゃうなんて前兆は、その時に見つけようったって見つけられるものじゃない。そして、その
  変化が発生してしまった時点で屈腱炎も始まっていると言えちゃうみたいなんだよ。」
弟「腑に落ちないな。」
俺「要するに、腱としての役割を担うハズの細胞が弱まるってこと。コレが屈腱炎のタマゴになるんだけど、この部分というのは
  休めば一時的に回復するし、どの馬にも起こっている現象なんだ。問題はその変化の周期だ、劣化するのが早くなり、回復
  するのが遅くなると屈腱炎発症のカウントダウンになる。」
弟「それが何故起きるのかがカギですね。起きないようにするにはどうしたらいいのでしょう。」

俺「競走馬にトレーニングするなと言ってる様なものだぞ、それ。」
弟「日常の運動でも起きちゃうんですか・・・」


俺「よく調教の表現で負荷をかけるって言うじゃん。そりゃそうだ、散歩しても負荷はかからない。軽かろうが重かろうがトレーニ
  ングはトレーニングだ。鍛えるってことが負荷をかけるということだよな。」
弟「まぁ・・・筋肉ってそうやって付けるものですからね・・・」
俺「ただし筋肉は鍛えられても腱にはただただ負担がかかる。腱や繋靭帯という部分は強化しにくいんだ。その部分を研究してる
  学者さんも多いけど、今のところ明確な答えは出ていないみたいだね。」
弟「ふーむ。」
俺「で、トレーニングすると体が熱くなるじゃん?それの繰り返しで起きてしまうのが細胞の変異なんだそうだ。腱が高音になると
  細胞が少しずつ変化していき、最終的には腱の役割を果たせない状態になり、そこに負荷が掛かると屈腱炎が発症する。」
弟「いいこと思いついた。」


俺「レース後や調教後のクールダウンは常識。」
弟「それはよかった。」



俺「安直なんだよ、お前のいいことは。」
弟「しゅん・・・」
俺「まぁでも予防の一環として大事なことではあるらしい。だからと言って冷やしすぎるのもよろしくないだろうけど。」
弟「それくらいしか予防の手立てはないのでしょうか。」
俺「他にも色々と対策は講じられているんだよ。例えばその腱細胞を構成するタンパク質の大半は美容でもお馴染みのコラーゲン
  だから、飼料にコラーゲン入れてみるとか。」
弟「お肌に良さそうですね。」

俺「ちなみに俺は、豚足や鶏皮は食うより肌に直接
  こすりつけた方が肌にいいと思っている。」

弟「やらないでね。くさくなるから。」


俺「食べた要素が自分の構成要素たる部分に回ると思ったら大間違いだ。」
弟「そういう話じゃありませんから。」
俺「様々なアイデアはあるのだろうが実を結んでいるのは冷却だけみたいだな。こう見えても屈腱炎の発症率は全体的に見れば
  昔よりも減っているそうだ。」
弟「ええー、なんか多くなってる気がするけど。」
俺「一流馬ってくくりになるとそう思えるんだろ。あくまで全体では減っているってこと。」
弟「ああ、なるほどぉ。」
俺「だって、蓄積疲労が原因だと言うのなら2歳馬は屈腱炎にはなりにくいハズだろう?でも実際に若い時期に屈腱炎になって
  しまう馬も居る。その部分が減って、なんとか3歳まで走れる様になったと考えればいいんだ。」
弟「先延ばしができているということか。でも根本の解決には至ってないんだね。」
俺「つまるところ、現代の競走馬管理体制だからこそG1シーズンまで走れた馬も少なからず居るんだと思いたいよな。」
弟「そういう風に見たら、過去には志なかばどころか、実際に走っていたらとんでもないレースができたはずなのに諦めざるを
  得なかった馬も多く居たってことになりますね・・・」
俺「ふるいにかけられるワケじゃないけど、こうなってしまう馬はなるべくしてなってしまったと言うしかない。ダメージの蓄積云々
  の問題じゃないんだからな。」
弟「その細胞の変異とかも、ひょっとしたら遺伝が根本なんじゃないですかね?」
俺「シンハリーズ産駒の兄弟がこれだけ屈腱炎になってしまったんだ、それは充分に大きな原因だろう。なりやすい馬は遺伝で
  なってしまうけど、蓄積がどーのこーのと言いながらも高齢までケガ無く走り続ける馬も居るんだからな。」
弟「杉林の近くに何年も住んでるのに、花粉症にならないおじいさん
  みたいなものですか。」

俺「返答を控えさせて下さい。」

弟「長く競走馬続けられるって、それだけでも素質なんですね。」
俺「あるいは走り方もあるだろう、常に全力になってしまうマジメな馬の方がケガをしやすいと言ったら皮肉かもしれないけれど、
  そういうのも実際あると思うよ。小牧騎手も言ってたでしょ。」
弟「で、今回は秋にこれだけの馬が屈腱炎を発症してしまったのですが、そうなると季節も・・・」
俺「さっき体が熱くなると細胞の変異が起きるって言ったでしょ。明確には記されてないけど夏場の暑さでそれが始まってしまい、
  秋に病気として発症してしまうってパターンは考えられると思う。」
弟「なるほどねぇ。」
俺「ここまでは屈腱炎に至る経緯と原因。次は、その治療がなんで長引くのか、何故不治の病と言われているのかを考えよう。」


★屈腱炎は治る?治らない?

俺「屈腱炎になると長い治療期間が提示されるよね。シンハライトは最低1年って言われてる。」
弟「うん・・・本当にもったいないね・・・」
俺「でも屈腱炎で予後不良ってのは聞かないよな。」
弟「そこがちょっとした助けでもありますよね。」
俺「脱臼や骨折となると、やっぱり患部が相当痛いんだ。その痛いのが治るまで固定しなきゃならないし、その痛い部分を庇おう
  とするから、治療期間中に他の脚に負担が掛かり合併症を起こしてしまう。結局、患部は治りかけたのに他の脚が蹄葉炎を
  起こしてしまい、治療を諦めなければならなくなった馬もたくさん居るんだよ。」
弟「炎症という病気の恐ろしさを感じますね・・・」
俺「でも屈腱炎は違う。すぐに痛みは引くんだって。」
弟「あら、そうなんですか?」
俺「骨折とかに比べたら痛みもそれほどではないらしい。ただ走ると痛くなるのが屈腱炎、痛くなると走れない、走れないと現役は
  続けられない。ただし痛みは激しい運動をしなければ出ないし、冷やすことで和らげることもできる。蹄と違い、常に接地して
  傷みを感じるわけじゃないから傷みで何かが起こる可能性は低いんだろうな。」
弟「ほー、なんだかおっかない感じはしませんね。」


俺「ただし治りません。」
弟「終わった・・・やっぱりおっかないじゃん・・・」



俺「何をもって完治とするか、それが問題になる病気だと思う。俺としてはあるお医者さんの言葉で、『元の健常な状態の腱になる
  こと』
を完治とするならば、それは現状では叶ってないと判断するよ。」
弟「でも痛みは引くんでしょう?」
俺「こうしておけば痛くないけど・・・ホラ、こうすると痛いのよー。」
弟「いるいる、そういうおばさん。」


俺「あぁ!?」
弟「そんなハタチはいません。」



俺「フーッ!!」
弟「怒らないで説明を続けてください!!」
俺「痛みは引いても一時的だし、何かの拍子にまたすぐ痛くなっちゃうってコト!!」
弟「それは確かに治ったことにはならないですね。」
俺「クセ付いちゃうっつーか・・・ヒトで言うところのギックリ腰みたいなものかな。あれも一回やると再発しやすいって言うし。一番
  解りやすい例えになるのが野球のピッチャーの肘の故障かも。」
弟「それよく言いますよね、屈腱炎は再発しやすいって。」
俺「変異した腱の細胞は、負荷をかけずに休みながら治療することで元通りにはなる。でも炎症を起こした後では元の腱の形に
  戻すことができない・・・というのが現状。だから再発しやすくなってしまうんだ。」
弟「なるほど・・・」
俺「その、元の状態に戻そうとするのに時間が掛かるんだ。完全復元は無理でも、これである程度はなんとかなるって状態まで
  回復させるだけでね。」
弟「程度にもよるのではないんですか?」
俺「屈腱炎になると患部が腫れあがり、外観がエビに似ていることからエビと呼称される。ただしそこまでの腫れが出なくても
  屈腱炎は屈腱炎なんだよね。この病名で発表された時点で治療は長期になると覚悟しなきゃならない。でもまぁ、やっぱり
  程度によって掛かる時間は異なるだろうな。」
弟「軽い屈腱炎って言葉が存在しないワケだ。」
俺「そゆことだね、腱に炎症が出てしまった時点で重症扱いなんだよ。それでいて骨折の場合はよく『治ったら元の状態よりも
  頑丈になる』って言うけど、腱の場合は『治っても弱くなってる』ワケだ。」
弟「うーん、本当に厄介な病気なのですね・・・」
俺「そう考えると、競走馬の不治の病と言われてもおかしくない病気だって解るね。一度発症したら常に再発の恐怖と戦い続ける
  ことになるのだから。」
弟「治療技術はどうなっているのでしょう、冷やして休み続けるしかないの?」
俺「病巣に腱の再生を促す治療用物質を投与したりすることもあるらしい。この再生医療が屈腱炎治療だけでなく蹄葉炎治療の
  希望になるといいんだけど、正直そこまで明確な結果が出ておらず、未だに様々な臨床試験が繰り返されている最中だ。」
弟「早期回復の手立てが確立されるといいですねぇ。あと明確な予防策も。」
俺「できることなら屈腱炎に留まらず、競馬界から予後不良という言葉がなくなる日を待ち続けたいものです。」
弟「獣医さんには頑張って頂きたいですね!!」





※かなり付け焼刃な知識なんで間違いはあるかもしれませんが・・・ちょこまか調べると結構勉強になるものです。
 シンハライト、リオンディーズ、マスクゾロが早く良くなります様に!!



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[ 2016/10/07 00:32 ] その他 | TB(0) | CM(2)

そういや、

人間はあるけど、馬のサポーターって見ないよねぇ
いつだったかトレーニングスーツみたいのは見たことあるけどぉq(^-^q)
[ 2016/10/07 00:55 ] [ 編集 ]

日本の「エビ」と同じく、英語では外観が弓に似ているため"bowed" tendonと呼ばれているみたいです。
極一部では、腱がtendonもとい天丼だから日本名がエビになったと、超マイナー説を主張する人もいるのだとかw

放牧のみの高齢馬やサラブレッド以外の馬でも屈腱を怪我する例はあるため、
特にトレーニングしなければ腱繊維が変形せずに安心というわけではなさそうなのが厄介そうです。

また、遺伝的な要因としては、テネイシンC関連の遺伝子の変異とV型コラーゲンα1関連の遺伝子の変異が、
浅屈腱の怪我発生率に関係があると、数年前の統計結果から一応予想されてはいるみたいです。
[ 2016/10/07 23:29 ] [ 編集 ]
立札4

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