名バイプレイヤーで新三大~グランシュヴァリエ編~

俺「どうする?やる?」
弟子「やんなさいよ。」


俺「いざ話そうとすると、非常に長くなって面倒なんだよね。コレ。」
弟「あのなぁ・・・何度約束破りゃ気が済むんですか・・・」
俺「だって月曜の夜だぞ。」
弟「・・・」
俺「競馬ブログ的には最も頑張りが無駄になる曜日。」
弟「月曜は毎回しょーもない話ばっかだからな・・・」

俺「・・・よく考えたら、この話もしょーもなさで言ったらバツグンだもんね。」
弟「そうだよ、スゲェしょーもないと思う。」

俺「じゃあやんなくていいじゃん。」
弟「そういう問題じゃねーって言ってんの!!」


★はい、長くてメンドクセェ新三大です

俺「さてそういったわけで。」
弟「何気に楽しみにしてたんだよ。」
俺「そっか。」
弟「こないだの浦和記念も凄い頑張った。」
俺「地方中央交流競走に於いては重鎮みたいなもんなんだぞ。」
弟「そうなんだねぇ。」
俺「お前と本格的に競馬で遊ぶ様になってまだ、そんなに日が経ってないんだよね。実際。」
弟「有名な馬とかは復習感覚で色々調べるんだけど・・・流石に自分一人じゃあ
  グランシュヴァリエには辿り着けませんよ。」
俺「・・・いい言葉じゃないか、辿り着けないか。そうか。」
弟「ボク自身、この馬のことあんまし知らないもの。師匠がいつも『最強だ』とか言ってる割に、カッコイイ姿をあまり
  見た事が無いし。そりゃ地元高知では凄い馬なんでしょうけど・・・」
俺「そうだな。」
弟「浦和記念はカッコ良かった。だから今スゴく興味ある。」
俺「それは今更だねぇ。」
弟「?」

俺「全世界に何人のグランシュヴァリエファンが居ると
  思っているのだね?」

弟「・・・多分折笠騎手ファンと同じくらいだと思う。


俺「シンジケート組めるぞ。」
弟「・・・募金でもするつもりですか。」
俺「ここでね、グランシュヴァリエの魅力をまだご存知ではない数少ない皆様に、彼の魅力を知って頂ければ良いなぁ
  なんて思って、今日のこの新三大をお届けするのですよ。お前も含めてだ。」
弟「本当にそんな凄い馬なんですか?」
俺「凄いというか・・・」
弟「というか?」

俺「偉大だな。」
弟「・・・」


俺「んだよ、その顔。」
弟「イヤな予感しかしない。」
俺「まぁ聞けばどんだけ凄い馬か解るって。」
弟「そう思いたいです・・・」
俺「では改めて。今回のテーマはコレです。」

★日本人が知っておくべき、新・三大
『土佐の猛将、グランシュヴァリエの奥ゆかしい
 4着劇』


弟「すいません、やっぱ寝ていいですか?」
俺「テメェ、俺のテンションをブチ壊すなよ!!」


弟「だってもう4着って言っちゃってるじゃん・・・」
俺「4着にも色々あるだろうが。グランシュヴァリエの4着はな、そりゃもう凄いんだ。」
弟「・・・本当に?」
俺「まぁ聞けば解るって。彼がどれだけ偉大で優しいヤツかが。」


 まず有権者の皆様に訴えたいのが、この馬がグランシュヴァリエ

グランシュヴァリエ

 青黒い馬体をした高知競馬所属馬。
 父は日本ダービー馬のタヤスツヨシ、母ラストキッスは父に昭和の怪物マルゼンスキーを持つ
 超良血馬なのであります。


弟「・・・いきなりだけど、ちょっと待て。」
俺「んだよぉ。」

弟「んなこと言ったら大体の馬が超良血になるだろ!?」
俺「超良血なんだよ!!貴族なんだよ!!」

弟「だって・・・タヤスツヨシには失礼かもしんないですけどねぇ、サンデーサイレンス初年度産駒にしてダービーを
  優勝した馬ではありますけど、その産駒成績は同期のフジキセキの足元にも及ばないじゃないですか。」
俺「なんだお前、つよぽんバカにしてんのか。」
弟「アンタだろーが、バカにしてんのは!!」

俺「まったく嘆かわしいな。こんな偉大なグランシュヴァリエを誕生させたつよぽんをフジキセキの足元にも及ばない
  だなんて。」
弟「つよぽんゆーな・・・」


 2008年、2月。3歳の遅いデビューを府中で迎えたグランシュヴァリエ。先行好位から圧倒的一番人気のケイアイ
プラウドを並ぶ間も無くアッサリ交わし新馬勝ちを収め、ダート界の新星として産声を挙げるのであります。



弟「あれ。」
俺「なんだよ、ちょいちょい話を止めるなよ。」
弟「グランシュヴァリエも元中央なの?」
俺「そーだよ、まぁ都落ちでの高知転厩だよ。」


 新馬勝ちをアッサリ決めながらも、格上になると好戦止まりの成績が多かったグランシュヴァリエ。4戦目に500万下
条件を勝利、その後は年内好戦はするものの未勝利に終わってしまい、翌年には降級。再び500万下条件を勝利し、
1000万下条件クラスを昨年に続き走ることになります。
 しかし、この時の彼にとってはこのクラスが一つの大きな壁。2009年の10月、江戸川特別で自身初のシンガリ負け
を喫してしまい、このレースを最後に中央へ別れを告げるのであります。

 4歳暮れという早い時期での都落ち。次の彼の戦場は高知、転厩先は雑賀正光厩舎でした。



弟「南関じゃなくていきなり高知なんだ。」
俺「そうなの。でも地方馬としての初戦は川崎だったんだよ。」


 地方初戦、川崎の報知オールスターカップ。8番人気の低評価ながら早め先頭の積極策を取ったグランシュヴァリエ
は、ここで古豪マズルブラスト相手に真っ向勝負を挑み懸命な叩き合いの末に半馬身差の2着。

『中央では歯が立たなかったが、この地方の舞台なら戦える』

 歴戦の古豪相手の二着に、陣営は手応えを感じるのであります。
 しかし、当のグランシュヴァリエにはそんな考えは微塵もありません!!

『もっと強いヤツと戦いたい』

 そう、グランシュヴァリエ自身は、実は『低レベルな争いに飽き飽きしていた』のであります。



弟「はいはい。」
俺「あ!!信じてないな!!」


弟「・・・じゃあなんで中央でもっと頑張んなかったんだよ。」
俺「1000万下条件なんて、グランシュヴァリエ様にとっちゃムキになるだけカロリーの無駄だったんじゃねーの。」
弟「あのねぇ・・・」
俺「この馬とリーチザクラウンはだな、本気出したコトがあまり無いんだよ。」
弟「リーチ君をここで持ち出すなよ!!」


 この南関初戦を一つの足がかりに新天地である高知を戦いの場に変えたグランシュヴァリエ。案の定、南関とは
レベルが違う高知競馬、力を出す出さない以前の問題でした。とりあえず走れば勝てる、そんな環境に彼の馬体は
日毎衰えていってしまいます。
 そんな彼に対し、闘争本能を呼び覚ます為に陣営が取った手段が、無謀とも言える交流重賞への挑戦でした。
 高知の黒船賞、大井の帝王賞、門別のブリーダーズゴールド、船橋の日本テレビ盃・・・いずれも彼の単勝オッズは
人気薄。特に中長距離の後半3戦は単勝が3ケタ超えのオッズを示し、周囲からは『なんでこの馬ここに居るの?』
という冷たい目線を浴びる始末。
 その結果も勝者からは大きく離された掲示板外。しかし、グランシュヴァリエ当人は全くそんな意識を持っていま
せんでした。

『フリオーソとか言う馬が居たな、あとシルクメビウスだっけ?カネヒキリって馬も居たけど本調子じゃなさそう
 だったな、あの馬が本調子だったら相当強かったんだろうって思った。

 でもこのメンツ相手には本気出す価値が無い。』


 そう、グランシュヴァリエはここまで全く本気を出していなかったのです!!



弟「えっとね、師匠ね。」
俺「なんでしょ?」

弟「バカでしょ。」

俺「ひどいことをいわれた。」
弟「あのねぇ、何を勝手に『グランシュヴァリエがそう言った』ことにしてるんだよ!?」
俺「そう言ってるもん。」
弟「どこでどうやって聞いたんだよ!?」

俺「その証拠となるのが次のレースなんだけどさ、ここでようやくグランシュヴァリエ様が本気を出すんだよ。」
弟「本気って言われてもねぇ・・・」


 続くレースも傍からは無謀と言われるレース選択、盛岡のマイルCS南部杯(G1)。グランシュヴァリエはここで
一頭の強豪に目を奪われます。

 ダートG1を5連勝しこの舞台に望んできた同期の強豪、エスポワールシチーです。

 圧倒的な単勝支持率で、この舞台で1.0倍。マイルという距離に関して言えば絶対王者とも言える存在、その貫禄
溢れる姿を見て、グランシュヴァリエはこう思ったのです。


『やっと本気で戦える相手に巡り合えた』


弟「・・・」
俺「さすがグランシュヴァリエ。」
弟「もう好きにしてくれよ・・・」


 連覇を掛けて望むエスポワールシチーの包囲網は当然中央勢力。JDDの覇者テスタマッタ、3歳の強豪バーディ
バーディ
らが、この大横綱相手に虎視眈々とする中、グランシュヴァリエも静かな闘志を内に秘め、運命のゲートが
開くのであります。
 レースを引っ張るのは今でもお馴染みのセレスハント、そして交流戦での安定勢力オーロマイスター。それに続く
形でエスポワールシチー。やはり中央軍団が先頭集団を形成する中・・・

 その先頭集団にグランシュヴァリエが加わっている!!

 先行馬群の外側をピッタリと追走し、3角を周りセレスハントの行き脚が怪しくなると同時に猛然と外から襲いかかる
グランシュヴァリエ!!内では行き脚を鈍らせたセレスハントを捌くのに、エスポワールシチーがもがき苦しんでいる
状態で、直線弾けたのはオーロマイスター!!エスポワールシチーがようやく内を捌き前を狙うも時既に遅し、連覇は
オーロマイスターの優勝により阻まれるという結果に。二着にエスポワールシチー、そして遅れること2馬身・・・

 3着、グランシュヴァリエ!!

『初めて本気で走った。走ってる時は本当に興奮したよ、あの馬に勝てると考えただけでゾクゾクしたけど、
 彼も内側でごちゃついてしまい本気が出せなかったな。勝ち馬はあんまし見えてなかった。』


 後にこの様に語るグランシュヴァリエ。心地良い疲れと満足感を全身に感じながら、ふと周りを見渡し、彼はこう
思ったのです・・・

『俺、本気出しちゃダメなんだな・・・』 

 ・・・それもそのハズです。単勝1.0倍という絶対的支持を集めたエスポワールシチーの敗戦も然ることながら、
この時のグランシュヴァリエの単勝オッズは636.3倍・・・
 12頭立て11番人気の彼の激走と、圧倒的1番人気馬の敗戦によりざわめく場内。祝祭的な雰囲気は皆無で混沌さ
すら漂っていました。状況が飲み込めていない観客達の姿を見て、彼はひどく落胆したのです。
 三連単配当は131万。今の交流戦ではにわかに想像できないオッズ、大波乱の立役者となった彼は、このレース
を最後にリアルファイトができなくなってしまったのであります・・・



弟「ひどいオッズですね・・・でも凄いな。テスタマッタとバーディバーディの追撃を振り切ったんだ。」
俺「セレスハントはバテて大敗したものの、上位6頭中5頭は中央勢。6着テスタマッタから7着コロニアルペガサス
  までの着差は6馬身、そう考えると先頭のオーロマイスターから5馬身はあってもこの3着は凄いと言える。」
弟「た、確かに・・・まともに中央に勝ってるってことになりますね・・・」
俺「でもね、グランシュヴァリエ様がおっしゃってる通り、彼の激走は殆どの人が予想し得なかったことだったんだ。
  それを感じてしまったんだ。その経験が彼の悟りを開いてしまわれたのだよ。」


新・三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』①
2011年7月18日 第15回 盛岡マーキュリーカップ
『人が望む結果を作りながら意地を貫く!!』

 まず有権者の皆様に訴えたいのが、この南部杯後の彼は苦悩の道を歩むということ。
 続くJBCクラシックでは自分がどう走ればいいのか解らなくなってしまい、せっかくの強豪との対決だったというのに
7着に敗退、地元の高知戦では実力を出す必要も無く圧勝・・・走りの為のバランスがここでまた崩れてしまったので
はないか、そんな風に周囲は思っていました。流石にこの時はグランシュヴァリエ当人も

『パドックのトコにある掲示板見ながらいつも思ってた。強い馬に本気出したいのは山々だけど、
 俺んトコに書いてある数字がいつも3ケタなんだよ。アレが大きいってコトはさ、俺が走ることを
 望んでいる人が少ないってコトなんだ。知ってるんだよ。』


 と、結構ヘコんでいたことを自白しております。つまり彼は自身のオッズを把握して、自分が走ることによって喜ぶ
観客の姿が想像できなくなってしまっていたのです。
 高知で走る時はいつも1倍台のオッズだけど、ここでは本気で走るまでもなく圧勝。このギャップが彼を大きく苦しめ
ることになってしまうのです。

 年はとうに変わり2011年の夏、昨年激走した盛岡の舞台にそんな彼がまたもやって参りました。
 地方馬として中央を迎え撃つ9度目の舞台、マーキュリーカップ。

 中央4歳の若い男女、ゴルトブリッツミラクルレジェンドが人気を分け合う少頭数の舞台。人気の中心はやはり
中央馬達、8頭中4頭の中央馬が人気を集め、グランシュヴァリエは5番人気とは言えオッズは100倍オーバー、完全
に地方勢はナメられたオッズを形成するのであります。圧倒的な人気を背負うのはゴルトブリッツ、新進気鋭の上がり
馬で、ここは負けられない一戦として見られていました。

『かっこいい馬だったね。栗毛がきれいで。でも
 
本気で戦いたかったけど、あのオッズじゃな・・・」


 ここでも自身を苦しめたのはオッズ。またこの場所でも自分の本気は求められていないんだ、そんな落胆を胸に
彼はこのレースに望むのであります。



弟「グランシュヴァリエさん・・・」
俺「優しいヤツだろ。」

弟「常に本気出してりゃ、それなりのオッズになるのよ・・・」
俺「それ言っちゃダメェ!!!!!」


 ゲートが開き、まず先手を奪ったのが牝馬ミラクルレジェンド。しかしそれをすぐ交わすメイショウタメトモ、それに続い
てゴルトブリッツ、パワーストラグル・・・中央4騎が地方4頭と馬群を分けます。やはり能力の差か、まるで置き去りに
されるかの様に後方を進む地方集団の中に、グランシュヴァリエの姿はありました。
 二周目の3角に向けて加速する中央集団。これでいいんだ、私が出しゃばる必要は無い・・・堂々と後続を突き放す
中央の三頭を見て彼は溜息混じりに走るのであります、そんな中で・・・

『一頭若い女の子が居てね、かわいそうに。前の集団の脚に着いて行けなくなっちゃったんだな。』

 そう、二番人気のミラクルレジェンドが伸びを欠いてしまったのです。それに接近するグランシュヴァリエ。

『競馬ってのは前三頭でお客さんが馬券ってヤツを買って、その結果で喜んだり悲しんだりするんだろ?
 
じゃあこの娘は抜いてもお客さんには関係無いんだよね。』


 本気というまででは無いものの、中央勢二番人気だったミラクルレジェンドにグランシュヴァリエが並びかけます!!
懸命に抵抗するミラクルレジェンド、前三頭は完全に抜け出し体勢はゴルトブリッツ優勝で決着がついている最中の
4着争いは完全にマッチレース!!

『あの娘にはレースの厳しさを教えてあげる必要があったんだ。』

 後にそう語るグランシュヴァリエ、直線で付けた3/4馬身のリードは縮まるコトなくゴールを迎えるのであります。
 そのレース後の反応は彼にとって意外なものでした。

「ミラクルレジェンドに勝ったぞ!!」
「地方馬最先着、よくやった!!」


 オッズを荒らさずの健闘に、彼は喝采を浴びるのです!!
 このレースを新三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』の一つとさせて頂きます。
 ご清聴ありがとうございました。



弟「・・・」
俺「どうだ、奥ゆかしいだろ。」

弟「バテたミラクル交わしただけだろ・・・」
俺「お前は何も解っちゃいない!!」


弟「師匠が大げさに言ってるだけじゃないか!!」
俺「違うんだって。現実にだよ、このレース後にミラクルレジェンドは真の開花を遂げるんだ。宿敵の女王ラヴェリータ
  に勝つことができたのは、ここでグランシュヴァリエにレースの厳しさと屈辱を味あわされたからこそなんだよ。」
弟「そうなの?」
俺「ミラクルはこのレースの後にこう言い残している。」

ミラクルレジェンド
『真横走ってたオジサンがキモかった。』


弟「何の参考にもなってねーだろ!?」
俺「『こんな気持ちは二度とゴメンだ』って強くなったの!!」

弟「・・・」
俺「あと二つあるし。」



新・三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』②
2011年11月3日 第11回 JBCクラシック
『本気を出せない葛藤が、別の本気を呼び起こす!!』

 まず有権者の皆様に訴えたいのが、やはり彼は大舞台で強豪相手でないと燃えないということ。
 この4着の後の地方馬同士のレースでは見せ場の全く無い敗戦となってしまうのです。

『弱い奴に勝ってもしょうがねぇだろ!?』

 本気を出せば勝てる、だがこんなメンバーで本気を出してもしょうがない。ひいてはそれが自身のオッズを下げて
いるというのに・・・普通のレースで圧倒的なパフォーマンスさえ出していれば、大舞台で気を使うことなく走ることが
できるというのに!!彼にはそれができないのであります!!



俺「イジメカッコワルイもんね。」
弟「もう師匠の好きな様に解釈してあげて下さい。」


 そんな中で迎えた競馬の祭典、JBC。この年のJBCクラシックは最早、この二頭の為だけのレースでした。
 スマートファルコンvsトランセンド

 地方交流戦で常に圧倒的な成績を残し続けてきた怪物スマートファルコン、それに対するは地方戦は初となる
ものの中央ダートG1を三勝、ドバイワールドカップでは2着という輝かしい成績を持つトランセンド。2010年、まだ
両馬が全盛を迎えていない時の対決以来の顔合わせに観客は歓喜しました。
 しかし、歓喜していたのは観客だけではありません。

『あの二頭は実際に会って「本気出しても勝てないかも」って思った。全力でぶつかり合える怪物が二頭も
 居るんだ、これ程うれしいことは無かったよ!!』


 グランシュヴァリエもヤル気満々なのであります!!
 彼自身、日本テレビ盃でこの二頭とは対戦を経験していました。しかし、あの時とは二頭共レベルが違う!!あの
時なら本気を出してしまえば勝てたかもしれない
が、今回は全力でぶつかっても勝てるかどうか解らない!!
 そう思い、ここで本気を出してお客さん達を悲しませてしまっても本望だという覚悟を内に、掲示板に目を向けたの
です。やはり自分のオッズは3ケタだ、そうだよ、こんな強そうな馬が二頭も居るんだ、当たり前じゃないか!!この
二頭になら全力出して構わない、多分そうしても負けてしまうだろう!!

 しかし、その覚悟は更に掲示板を見るにつれ、薄れていってしまうのです・・・

『お客さんには、三頭しか見えてなかったんだよね・・・』

 この時の人気は当然の如くスマートファルコンとトランセンドの一騎打ちを表していました。問題は三番人気以下、
ここが団子状態なら自分が三着になることで南部杯の様な悲鳴は上がらないだろう、そう思っていた彼の目に飛び
こんできたのは、3,4番人気と自分のオッズのギャップでした・・・

3番人気 シビルウォー 単29.2倍
4番人気 テラザクラウド 単59.8倍
8番人気 グランシュヴァリエ 単270.9倍

 ・・・構うものかと本気を覚悟した彼の脳裏に、南部杯のざわめきが蘇ってしまいます。彼はこのレースの後にこう
語っています。


『本気を出してしまったら、シビルウォーには
 勝ててしまう・・・それはダメだ。』



弟「はいストップ。」
俺「はいなんでしょう。」

弟「とりあえずシビルウォーのファンに謝っておこうか。」
俺「本当なんだもん!!」


 最高の舞台を前に、彼は苦悶するのであります。本気で走りたいという欲求、観客を驚かすワケにはいかないという
気持ち、どちらを優先するべきなのか・・・悩んでいる内に発走の時間が刻々と近づきます。彼の背には若き南関の
星、本橋孝太騎手。三度目のコンビとなる彼の手綱に従おう、グランシュヴァリエはそう心に決めるのであります。
 
 そのレースはあまりにも壮絶でした。ゲートが開くと同時にもうマッチレース、鋭く先頭を奪うスマートファルコン、追う
トランセンドの二頭が後続をぐんぐんと突き放していきます。高速なラップメーカーであるスマートファルコン、追えば
自分が潰れてしまうということを臆せずに、それを追いかけるトランセンドが完全に二頭の世界を作り出します。
 その夢の様な光景をはるか前方に、グランシュヴァリエは後方集団に控えました。無理はしないという本橋騎手の
判断は、辛いことに彼を道中の時点で夢舞台から落としてしまうのです・・・

『もう向こう流しの時点で、前に居る三頭には届かないって解った。だからこれでいいんだ。』

 もう前三頭と後続集団では、走っているレースが違う。前二頭の後にはシビルウォー、そのシビルウォーと4番手の
間には大きな差が生まれていました。この三頭で決まる、観客も後続も確信するのに時間は要りませんでした。
しかし、当のグランシュヴァリエは全く違う気持ちを持っていたのです。

『どうせ届かないの解ってるし、ここからなら本気出してもいいかなって。』

 3角から外を捲り上げ、一気に5,6番手に進出するグランシュヴァリエ。もう前を行く三頭は別の世界を走っている中、
本橋騎手のやっとのゴーサインに鋭く反応します。4番手のテラザクラウドさえ遥か前方、しかし彼の目標はここに
定められます。前に離され、走る気力を失ったテラザクラウドは最早、レース前に上位二頭相手に胸を震わせた彼の
敵ではありませんでした。
 テラザクラウドをキッチリ交わしたところが彼の4着のゴールとなるのであります。

 3着シビルウォーとの着差は2秒以上、これはもう向こう正面で付けられた差に他なりません。
 しかし、彼はここで一つの本気を出し切ったのであります。

 上がり3F、メンバー中最速の36.5秒。

 この上がり時計は、歴代の大井2000m戦でも目を見張るタイム。もしも、彼が必要以上に安全策を取らずとも、この
末脚を繰り出していたら・・・

『あぁ。シビルウォーの位置で充分だったんだよ。』

 このレースを新三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』の一つとさせて頂きます。
 ご清聴ありがとうございました。



弟「うん。」
俺「うんうん。」
弟「やっぱりシビルウォーファンに謝っておこう。」
俺「ウソじゃねぇもん!!!!!」
弟「つーかさ・・・」
俺「なんだよ。」
弟「グランシュヴァリエさんの態度が奥ゆかしくないんだけど。」
俺「そうかな?」
弟「後付けで『本気なら勝ってたんだよ』って言う方は、奥ゆかしいとは言わないでしょうが。」
俺「うーん、確かに。でも性格はともかく成績としては奥ゆかしいでしょ。」
弟「奥ゆかしいってのは性格のコトでしょ。」
俺「・・・俺、自分のことを奥ゆかしいって思ってるんだけど。」
弟「ああ!!解釈できてねぇんだ!!」


新・三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』③
2013年11月20日 第34回 浦和記念
『まだ終わってなどいない、4着こそが彼の1着!!』

弟「こないだのレースだ!!」
俺「この浦和記念は頑張ったと思うよ、本当に。」
弟「ここでも本気じゃなかったとか言うんでしょ・・・」
俺「いや、ここのグランシュヴァリエは結構本気だったと思う。」
弟「え・・・?」


 まず有権者の皆様に訴えたいのは、6歳暮れからグランシュヴァリエが確実に衰えだしたということ。
 それまで本気を出せば勝てていた、そうだったかもしれない彼に、その可能性が無くなってきてしまったのです。



弟「・・・師匠言ってたね。」
俺「6~7歳までは、交流戦でまだやれるかもって望みを持ってたんだけどね・・・」


 それを表すかの様に、7歳暮れから今年にかけ、交流重賞ではなく地元戦メインにレーススケジュールを合わす様に
なってしまいました。そんな地元戦も今までは散歩感覚でも勝てていたのに、最近は取りこぼしが出てくる様になって
しまったのです。

『あの頃みたいにはいかなくなってきたね』

 寂しさを滲ませるグランシュヴァリエ、そこには3年前に南部杯で観客を呆然とさせた彼は居ません。
 高知での成績を買われ、メンバーレベルを考えても戦えるのではないかと見られていた今年の佐賀記念でも、彼は
オースミイチバンを懸命に追いかけるのがやっと。なんとか掲示板を死守したこのレースで、彼は自身の衰えを痛感
してしまうのであります。
 佐賀の中島英峰アナの素っ頓狂な実況を聞きながら、あの頃の様な末脚が出せたら直線で名前の一つも呼んで
もらえただろうに・・・と切なさを噛み殺しながら地元に戻った彼を、今度は本格的に老いが襲います。
 今までは勝てなくて当然とまで言われていたレースがメインのスケジュールから、今度は勝って当然のレースが
メインになるスケジュール。しかしこのスケジュールが若かりし頃にあった彼の闘争本能を削いでしまうのであります。
2013年の高知での彼の成績は5戦2勝・・・勝利レースも今までの様なブッちぎりな勝ち方は減ってしまいました。

『本気が出せなくなってしまったのか、今出していたのが本気なのか・・・自分でもよく解らない。』

 そんなレースを使っていた彼がいきなり交流重賞に現れても歯が立つわけがありません。あの激走を演じた舞台、
盛岡の南部杯・・・あの時とオッズこそそっくりな状態で迎えましたが、ここで彼は人生二度目となるシンガリ負けを
喫してしまうのです。
 立て続けにG1レース、JBCクラシックに出走するも後方追走から大きくバテた馬を交わすのがやっと。土佐の猛将
もここまでか・・・8歳となったグランシュヴァリエは、それまでの輝きを完全に失ってしまったかの様に思われました。



弟「・・・」
俺「もう厳しい、引退させるか地元でのんびり走ってもらうかした方がいいんじゃないか、本当にそう思ってたよ。」
弟「だからこそ、次のレースなんだよね。」
俺「そうだね、こないだの浦和記念だ。」


 しかし、このG1レースの連戦が彼の実力を呼び戻したかどうかは定かではないものの、再び彼にその実力が蘇る
のであります!!
 2013年の浦和記念は正にJBCクラシック崩れの様なメンバー構成。しかし流石に彼も今年は大口を叩く意気も失わ
れておりました。


『あの時なら勝てたシビルウォーにも、今じゃ正直勝てる気がしないなぁ。』


弟「どんだけシビルウォー嫌いなんだよ!?」
俺「いや、嫌いじゃないんだけどね・・・」



 白山大賞典の勝者エーシンモアオバー、古豪となったシビルウォー、復活を賭けるランフォルセ・・・中央の三頭
が人気の上で他を大きく突き放し、誰もがこの三頭の決着を事前予測できるレベル。過去に重賞戦線で健闘してきた
グランシュヴァリエはと言えば、それはまるで過去のこととされたシンガリ人気、単勝281倍
 自分のオッズを見ても、もう鼻でせせら笑い『だろうね』と言える程、彼は落ち着いていました。
 しかし、ここで彼は今年最大の輝きを放つのです。

 ゲートが開くと真っ先に飛び出していったのは南関のマグニフィカ。ハナを叩けずにエーシンモアオバーが続き・・・
 グランシュヴァリエ3番手!!

 まさかの先行、中央組を後ろに置いてのレースになるのです。延々と外を回りながらの積極策、二周目に入ると同
位置に付けた最内のケンブリッジエルが失速、マグニフィカとエーシンモアオバーが相変わらず果敢に飛ばす直後に
ピタリと食らいつく彼を、勢いよく交わして上がるシビルウォーとランフォルセ。

『そうだよなぁって思った。で、それでいいじゃんって思った。でもねー・・・』

 直線を向くとマグニフィカは一杯になり後退、シビルウォーとランフォルセがマッチレース状態になり、三番手にエー
シンモアオバー。後続には10歳ながらも交流競走で健闘を続けるダイショウジェット。しかし・・・

 末脚を失ったエーシンモアオバーとの差を徐々に詰める
 グランシュヴァリエが!!

 まさかの事態にどよめく場内、最低人気の彼が上位三頭の一角を崩さんとエーシンモアオバーを狙います!!
しかし浦和の直線は短い、開いた差を2馬身程に詰めたところがゴール・・・しかし彼の存在が多くのガチガチ馬券に
スリルを与え、

「あとちょっとでエーシンモアオバー差せてた!!」
「流石はグランシュヴァリエだ!!」


と、久しぶりの大舞台4着に、大きな喝采を浴びることと
なったのです!!






 レース後に彼はこの様に語っています。

『自分自身あんなに走れるとは思ってなかったよ、やれるもんだね。
 オッズ思い出して止まらなかったらアイツ抜いちゃってた
 けど、思い出せて良かった。抜かずに済んだよ。』


 彼にとって、人気薄での4着は1着と同じなのです。多くの観客の馬券を散らさずにレースを続ける紳士な彼は、
正にその名の通り

Grand Chevalier = 偉大な騎士(仏)

 なのであります。
 このレースを新三大『土佐の猛将グランシュヴァリエの奥ゆかしい4着劇』の一つとさせて頂きます。
 ご清聴ありがとうございました。




弟「なんとも凄い馬なんですねぇ。色々と。」
俺「カッコイイでしょう。」
弟「ちょっと傲慢ですね。」
俺「それは俺のキャラ付けによる問題かと。」
弟「でも味のある子なんだなーってのはよく解った。確かに地方馬の中では強豪ですね。」
俺「本当にねぇ、フツーに地方馬同士の交流戦も走っていればねぇ・・・」
弟「そういうとこだと弱かったんだね・・・」
俺「弱いっつーか本気出さないものだから・・・」
弟「そこんところが妙に本当っぽいよね。」

俺「地方レースでも中央交流重賞か地元戦ぐらいなんだよ、南関戦とか全然だもん。移籍初戦の報知ぐらいだよ、
  連に絡んだのって。」
弟「これだけ大舞台で走ってるのに!?」
俺「ヒネクレてるでしょ。だから大好きなんだよね。」
弟「応援する面白さは強い子なんだろうなぁ。」

saikyoubanosyoumei.jpg

俺「毎回本気出せよなぁ~。」
弟「だからコレは間違いだってば・・・」





※ご清聴ありがとうございました

  

PLEASE!! 1Day 1~10Click!!

[ 2013/12/03 01:27 ] 新三大ごっこ | TB(0) | CM(16)

長すぎ(笑)ガラケーじゃ全部表示出来ないとゆー(;_;)
[ 2013/12/03 10:47 ] [ 編集 ]

目の付け所が面白かったですw

でも、わかるわ~
新しいことでもやるタミングを逃した後のやる気のなさw

そうかぁ、オーロマイスターの南部杯って出てたんだ・・・
知らなかった・・・

毎回思うんですけど、師匠の牝馬目線ってなんで全部ギャル系なんでしょうか・・・
牡馬はおっさんが多いのにw
[ 2013/12/03 11:28 ] [ 編集 ]

応援してます。

いつも楽しい記事を有り難う御座います。
私も長年競馬ファンをしており、ストライクゾーンが一緒で師匠さんとは同世代だと感じております。私事ですが極度のギャンブル馬鹿でして、
年間に所得以上に打つ年も多々。
今年も競馬で身を滅ぼすほどに負けてます。笑

最近は、つまるところ競馬はアカーン、と今更に競艇をおぼえ 笑
年間収支をどうにか持ち直しに計っておりますが、どうしてもこのサイトの更新が気になり、閲覧し、
お馬さんは中央南関と遊び程度に大きい所を触っているぐらい。
私の競馬断絶に対し悪の根源はこのサイトだと自負しております笑
三大は、本家も見てますし、当サイトの三大も負けず劣らずの出来。
是非、本家で流して欲しいモノです。笑
個人的には淫獣の話が秀悦ですね。深夜枠だし、是非、丸パクリで、やくみつる氏のコメントを
井崎先生にすり替えてやってもらいたいものです。笑
サラブレッドは動物の中でも、人間に似た感情を持ち合わせてると聞きますが
牡馬が若駒のチャンネーのケツを追いかけ回すなんて当然の仕業。今度はセン馬も混ぜ、2丁目劇場的な話にも期待してます。
なんにしても、日々の更新頑張って下さい。応援してます。
[ 2013/12/03 15:05 ] [ 編集 ]

高知のもう一つの星、タンゴノセック○が六着でしたよ
[ 2013/12/03 17:00 ] [ 編集 ]

2400mのスーパーレコードから本気のグランシュバリエのスピードは83kmを超える…。

もし、この末脚を使えれば上がり3Fは26秒台をマークすることができ、
シビルウォーどころか、スマートファルコンにも約7秒の差をつけて
フィニッシュ、観客を阿鼻叫喚させることができることに…w

やっぱり、グランシュヴァリエさんはすごい奥ゆかしいですねw
[ 2013/12/04 00:40 ] [ 編集 ]

いやいやホンマに…

お師匠さんは何事にもよお~く目を凝らしてはるんですなぁ。人、馬、レースを語る時の内容には本当に感心してしまいますゎ。
これからもその鋭い視点と話を膨らますユーモア&妄想力に期待して、記事の更新を楽しみにしてますゎ。

しかし、これだけの事が出来るのに馬券の結果が芳しくないのは、やはり思い入れも強過ぎるからですかいねぇ?www
まあ今年も残り少なくなってますが、お互いに頑張りましょう。
[ 2013/12/04 06:09 ] [ 編集 ]

シュヴァリエは時に見所ある末脚を使っていたのでついつい狙いたくなるんすよね(;-_-)

こないだは本当にビックリした(笑)

そろそろ…

ビジン姉さんがやってくれるハズです(ニヤリ)

『笠松の女傑トウホクビジン!いつのまにやら3着劇』
[ 2013/12/04 07:50 ] [ 編集 ]

ほんま

このブログに出会えてよかった。

まだ三大は読んでないんやけどね(テヘ
[ 2013/12/04 08:02 ] [ 編集 ]

>まさらっきさん

長いよね。自分で読み返してビビった。
[ 2013/12/05 01:30 ] [ 編集 ]

>無記名さん

それはアタイがギャルだからさ。
ガーリーらよのわさ。アッチョンブリケ。
[ 2013/12/05 01:33 ] [ 編集 ]

>早坂さん

コメントどーもです!!

今日はギャンブルはほどほどにね!!っていう更新になっちゃったわけですが、
はてさて。
[ 2013/12/05 01:34 ] [ 編集 ]

>無記名さん

○を付けて意味深にするなー!!!!!
[ 2013/12/05 01:35 ] [ 編集 ]

>通りすがりの馬主さん

芝でもこのタイムはなかなか出ないゼ!!(そもそも無理)
[ 2013/12/05 01:36 ] [ 編集 ]

>飛天龍翔さん

好きな子はねー、買わないと来るの

・・・どうすりゃいいんだ。
[ 2013/12/05 01:39 ] [ 編集 ]

>ざくろさん

ビジンちゃん、何気に先行激化すると来るんだよな・・・
[ 2013/12/05 01:40 ] [ 編集 ]

>妄想マンさん

そう思っていただけて何よりでゴザイマス。

新三大は「怒り新党」の人気エンドコーナーですよ。
[ 2013/12/05 01:41 ] [ 編集 ]
立札4

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