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競馬怪談 「その日の二日後」

俺「さてと。とりあえず週末まで予想しなくてもいいんだな、また。喜ばしいですなぁ。」
弟子「なんで競馬ブログやってるんだアンタは・・・」
俺「何しよっかー。」
弟「今日はもう、スパーキングサマーカップの結果の更新だけでいいでしょ。」

俺「暑いから怪談話してやんよ。」
弟「競馬関係無いじゃん!!」

俺「いーじゃーん。どーせこんな水曜木曜に競馬ブログなんか見る奴いねーって。」
弟「やですよ・・・怪談なんて・・・」
俺「いーじゃーん。なんでー?」

弟「怖いの苦手だもん・・・」
俺「ホッホーゥ♪カーワウィウィネェー♪」

弟「・・・だからいやです。」
俺「何も怪談が全て怖いものだとは限らんよ。不思議な話だって怪談になるんだ。それに、ちゃあんと
  競馬絡みの内容だし。」
弟「競馬絡みの怪談なんてあるんですか?自分の知らない内にお金がどんどん無くなるって話ですか?
俺「それただの自覚ないバカじゃねーか。」
弟「怖くないですか?」
俺「結構有名な話だよ。ちょっと何番煎じになるか解らないが、知ってる人にはニュアンスや解釈の差を
  楽しんでもらえればと思う。10年以上も前の話だから、知らない人も結構居るとも思うし。」
弟「いや、あの、怖くない話?」
俺「怖くないよー。あ、でも・・・」
弟「でも?」
俺「泣いちゃうかも。」
弟「怖いってことじゃん!!」

※注意:相当長いです。覚悟して読んで下さい。

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「その日の二日後」

 もう12年も前の話である。

 私は友人と新橋のウインズに来ていた。もちろん目当ては競馬なのだが、この日はその友人とどうしても話しがしたかった。当時の私の競馬友達は彼ぐらいしかおらず、競馬の話をしたい時はお互い呼び出し合いをしていた。そんなに頻繁なことではないが、結構お互いを珍重していた部分はある。この日の二日前、私は彼に電話をした。

「やっぱり。掛かってくると思った、俺も電話しようと思ってたんだ。」

 二日前、競馬業界に大きく衝撃を残す事故が発生した。
 山元トレーニングセンターの火災事故である。

 漏電での火災で厩舎が一棟全焼し、22頭の競走馬が犠牲となった事故。(放火説なども持ち上がったが、現時点のところでは漏電による火災であるとされている。)
 その事故はメディアにも大きく取り上げられた。一般のニュース番組でも大きく報道され、当時日ごろからスポーツ新聞を読んでいない私の目にも飛び込んできた。この火災で、当時私と彼が非常に応援していた一頭の競走馬が命を失った。

 エガオヲミセテ

 私は大のエアグルーヴファンだった。エガオヲミセテの祖母はダイナカール、つまりエアグルーヴの姪にあたる馬だ。その血統もさることながら、名前の可愛らしさ、気まぐれな競争成績は非常に魅力的であり、レースに出てきては馬券を購入していた。彼はデビュー時から注目していた様で、重賞初勝利となった阪神牝馬特別の日はレース終了直後にすぐ電話をよこしてくる程のファンだった。
 ウインズの前で合流、お互いすぐには中に入らない。近くの灰皿に向かいタバコに火を点け、一息ふぅと大きく煙を吐いて、彼は頭をボリボリと掻きながら虚ろな目でこう言った。

 「なんでだろうなぁ。」

 私もショックではあったが彼の方がこの悲報から受けたダメージが大きいというのはすぐにわかった。
 競馬ファンは「死」に対する耐性がある。競走を中止したサラブレッドの大半がどのような運命を辿るかいっているし、成績を上げられず未勝利に終わってしまった馬がどうなるかも知っている。デビューすらできない馬だって沢山いる。その上でギャンブルと割り切ったりロマンを追い求めたりと、人それぞれの見方をしながら競馬に相対しているはずだ。
 だからこそ、だろう。こういう形で応援していた馬を失うことに、逆に慣れていなかった。勝負の世界をまだまだ生き続けられたであろうサラブレッドが、人災で消えてしまったという事実を、彼は納得できなかった。

「熱かったろうな、なんでこんなに愛された馬がこんな死に方しちゃうんだろ。世の中何が起こるかわかんねぇよなぁ。」
 エガオヲミセテはその名前からも非常に多くの方に愛されている馬だった。この馬に関して言えば、野次を聞いたことがない。人気しては負け、人気が無くなると勝つ、そんな成績にも関らず競馬好きなおじさん達から「エガオちゃんは俺をエガオにしてくんねぇんだよなぁ」などの苦笑いを常に誘っていた。

「他にも21頭の馬が死んじゃったんだろ?」
「若い馬が多かったみたいだよ、調べてみたんだけど。可哀想だな、今更何言ってもどうにもならんけど、とにかく可哀想だ。」

 競争中止の事故で命を失った馬にも惜別の念はある。不条理ではあるが今回のケースに関しては腑に落ちない、そう我々は感じていた。
 生前のエガオの話をしながら新聞を広げ、淡々とその日のレースを予想できる辺りがやはりドライではあるのだが。

 その日、奇跡的にも私の予想は冴えていた。と言っても買い方は現在同様小額で、当時は三連単、三連復、馬単が無く、取れていたのは馬連なので「大儲け」って程にはならない。彼はというと予想が全く冴えず。普段は彼の方が私より全然詳しいしよく当たるのだが、この日は不調気味だった。そして普段なら「ああクソ!!」とか「そうなったかー!!」とか大きいリアクションを取るのだが、さすがにこの日はハズす度にどんどん気落ちしていく様だった。

 午後三時

 もうすぐメインレースというところで彼が「アレ」と素っ頓狂な声をあげた。

「どうしたよ?」
「はー、そう言えばそうだそうだ、ユーセイトップランて音無厩舎だった。」
「それがどうした?」
「お前、それでもエガオのファンかよ(笑)」

 音無厩舎・・・エガオヲミセテを管理していた厩舎だ。私は当時、あまり所属厩舎なんて気にしていなかったが彼はすぐ様それに気付いた。いや、思い出した。
 この日のメインはG3のダイヤモンドステークス。当時は府中の3200mという距離で争われていたがポジションとしては現在とあまり変わりない。天皇賞春のステップとしては阪神大賞典や日経賞、大阪杯といったG2に比べて遥かに見劣る。出走メンバーも低調なイメージで、その点は現在と同じと言えるだろう。
 その出走メンバーの中に、ユーセイトップランは居た。二年前のこのレースを制し、その後G2のアルゼンチン共和国杯で大穴を演出した重賞二勝馬だ。エガオヲミセテと並び音無厩舎を引っ張る厩舎の大将格。と書くと有力馬の一角に感じられるが、今回のレースに至るまでの成績を見たら買いとは到底思えない。この前年のレースは5走して全部二ケタ着順、年明けして前走となった日経新春杯も14頭中の13着・・・いくら府中で重賞を二勝していて穴駆けするとはいえ、年齢も8歳となるとさすがに手は出し辛い。おまけにヤネはテン乗りの当時若手ジョッキーであった後藤騎手だし。
 それでも前年のレースがほぼG1だったこと、そして今回はメンバーが低調だったことから単勝人気は17倍程度に落ち着いていた。人気を集めていたのは上がり馬で豪腕デムーロ騎乗のタヤスメドウ、軽ハンデで長距離成績が安定していたメジロロンザン、そしてユーセイトップラン同様に重賞を二勝している岡部幸雄騎乗のスエヒロコマンダーと言った面々。どの馬もイマイチ自信を持って張ることができない、予想の難しいレースだったことは確かだ。

「トップラン、応援するか。金もう無いけど。」

 彼は苦笑いしながらユーセイトップランの単を100円購入した。

「よし、乗った。」

 私も単を買った。勝っていたので調子よく1000円購入。

「お前腹立つなぁ(笑)」

 ようやく彼らしい口調に戻った。だがお互い、この時ユーセイトップランが勝つとはあまり本気で考えていなかった。

「俺ねぇ、応援馬券て言葉嫌いなんよ。買っただけじゃ応援になんねーの。解る?
 買った金額が大きければ大きい程、本気で応援するでしょ。応援に気を込める為に
 1000円買ったワケ。」
「それで1000円てのもどうかと思うぜ。」

 我ながら、理解し難い屁理屈はこの時から一丁前だった。でもこの考えは今でも変わっていない。勝って欲しいとより強く念じる為に、私はこの時馬券を購入した。勝つと予想したわけじゃない、勝ってほしかったのだ。

 ファンファーレが響き、いよいよ発走。ぼんやりとモニターを眺めていると、彼が

 「エガオもどっかで兄貴分の走りをみてるのかねぇ。」

 と呟いた。
 
 ゲートが開くと同時にユーセイトップランは馬群の最後方につける。いつも通りだ、彼のスタイルは後方で我慢し続けて直線で一気の追い込み。しかしながらこのところは全くの不発。ハイペースで前が潰れれば理想的だが生憎ペースはスローのまま、二周目に突入していった。
 向う正面中ほど。前の方の隊列は徐々に入れ替わりペースが上がり出すも、依然ユーセイトップランはシンガリ。それでいい。と、三角手前辺りで異変が起こる。
 
 シンガリに居たユーセイトップランが、すーっと位置を上げていったのだ。
 まるで、「何かを見つけて追いかける」ように、力みなくすーっと。

 あまりにも早い仕掛けだ、ましてや直線の長い府中で三角奇襲なんて上手くいくわけがない。レースを乱す行為とも取れる。ウインズ内はどよめきと罵声で混沌とした。
 「何やってんだ後藤!!」
 「ふざけるな!!へたくそ!!」
 そんな野次を尻目に、私と彼は口を半開きでポカンとしながら状況を見つめていた。何か「ゾクリ」とするものを感じながら。

 果たせるかな、トップランは四角手前で既に先頭に立っていた。コーナーを曲がりきると長い直線が口をあけている。後続も手が動き出し追い上げにかかる。持つはずがない・・・普通ならそう考えるだろう。誰しもがそう思っていただろう。
 しかし我々は自分がユーセイトップランの馬券を買っていたことも忘れ、その走りを見ていた。その事故とトップランの因果を知っている私と彼は、長い直線を唖然としながら見ていた。
 追いつかれるどころか、トップランは後続を突き放した。まるで何か「壁にでも当たってしまったかのよう」に残り100mの辺りで後続勢が横並びになる。その外から軽量の8歳馬、11番人気ジョーヤマトが脚を伸ばしてきたがリードはもう十分だった。

 2馬身半の差を二着のジョーヤマトに付け、ユーセイトップランは先頭でゴール板を駆け抜けた。

 「なぁ、これって・・・」

 騒然とするウインズ内。大波乱の結果だから無理も無い。そんな喧騒を尻目に、目を真ん丸くした彼が私に話しかけてきた。

 「エガオの調子のいい時の走りに似てたよな・・・」

 彼女の重賞初勝利となった阪神牝馬特別。三角手前から動き出し、直線入り口では逃げるキョウエイマーチと横に並び、叩き合いで名牝をねじ伏せたあのレース。それとダブる部分は確かに感じた。重賞二勝目もコーナーで加速して先行勢を早めに捉えて勝利している。にしてもだ、不思議だったのは三角手前からの動きである。

 「すーっと上がってったよな、いつも後方でじっとしてる馬が。」

 後藤騎手はレース後、「やっちゃいました」と言った。「やっちゃった」とは、「やってはいけないことをやっちゃった」という意味だろう。なら何故「やっちゃった」のか。少なくとも無理に抑えようとする動作は無かった。仕掛けるにはまだ早いと解っていた。上がっていったのは、「上がろうとするトップランを押さえつけず、むしろトップランの行動を後藤騎手が援護したから」だ。

 「何か追っかけてるみたいだった。」

 彼の言葉に私はギョッとした。同じことを考えていたのだ。その時周囲からふと、こんな言葉が聞こえてきた。声を詰まらせた感じの男性の声だった。

 「こんなことあるんだな・・・」

 その事故とユーセイトップランの因果を知る者にしか感じることのできない何かがウインズに漂っていた。

  ユーセイトップランは、妹分であるエガオヲミセテを追いかけていた。
  エガオヲミセテは、兄貴分に最後のお別れを言いに府中に来ていた。

 「でしゃばりな子だね。」
 「そうだな。名前通りおせっかいな性格なんだよ、多分。」
 「俺らの応援、全く意味無かったな(笑)」

 勝手な想像になるが、そう思えて仕方が無い。音無師はレース後に、「天国のエガオが後押ししてくれたんだと思う」と語ったそうだ。しかし私は、エガオは「押す」のではなく「引っ張った」のだと思う。エガオとトップランが同厩とはいえ生前この二頭が仲良かったとかのエピソードは聞いたことが無いのだが、恐らく仲のいい兄妹みたいだったのではないだろうか。
 そんな妹分が天に昇る前に、共に亡くなってしまった仲間たちを強引に引き連れて、最近成績のだらしない兄貴分と、世話になった音無師に最後のお礼をしに府中へ赴いた。エガオは自分の得意パターンでトップランを引っ張りゴールまで導き、他の馬たちはエガオ隊長の指揮のもと、最後の直線で後続の進路妨害(おいおい)をした。

 結局その後、ユーセイトップランは勝利を飾れず、故障などもあり引退。今は馬事公苑で余生を送っているそうだ。

 ちなみに私はその馬券を換金して、その日負け倒した彼に居酒屋でメシをおごった。トップランとエガオからの最高のプレゼントを有難く頂戴し、エガオと、事故で亡くなったが馬達が無事成仏できるよう祈った。
 彼はその馬券を換金せず、今も大事にお守りとして財布の中に忍ばせているそうだ。
 何だか、換金して彼にメシを奢ったのが馬鹿馬鹿しく思えるのと、その時の思い出をちゃっかり形として残して持っているのが羨ましいのとで、私は無性に腹が立った。


※その時のダイヤモンドステークスの映像が残っていたのでここに貼っておきます。


ニコ動なのでコメ消し推奨。ひょっとしたら貴方なら見えるかもしれない。
ユーセイトップランを導くエガオヲミセテの姿が・・・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



弟「・・・・・・・グスッ」

俺「何泣いてんだよ(笑)」

弟「一ついいですか、師匠・・・グスッ」
俺「なんだよ。」

弟「コレ本当にアンタが
  書いたんですか・・・・・グスススッ」

俺「ひどいや!!!!(号泣)」



※本当に書いてますよ・・・・グスススッ
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[ 2012/08/23 02:08 ] 競馬怪談 | TB(0) | CM(7)

いい話しですね

なんかいい・・・

競馬予想よりイキイキしてるなぁ。見てました、このレース。びっくりの覚えているけど、こんな解釈があったなんて。

でも本当にグランシュバリエの記事書いた人が、これ書いたの?(笑)
[ 2012/08/23 07:16 ] [ 編集 ]

いつも読まさせて頂いております。

初コメです

まさか、主さんのブログで泣かされるとは思っていませんでした(泣き笑い)
[ 2012/08/23 08:18 ] [ 編集 ]

>saiさん

本当に書いてますってば!!(号泣)
[ 2012/08/24 21:18 ] [ 編集 ]

>暇虫さん

初コメありがとうございます。


本当に書いてるんだってばあああ!!!!(号泣)
[ 2012/08/24 21:20 ] [ 編集 ]

感動しました!

ユーセイトップランという競走馬の話を初めて知り、
動画を見たら…
エガオヲミセテが乗り移っているかの様なレースに私は感じました。

ステキなお話をどうもありがとう。
力作の感動話だと思います。
[ 2014/02/02 21:57 ] [ 編集 ]

>砂かけ馬場さん

すっげぇ遡ってくれたんですね、こちらこそありがとうです!!
[ 2014/02/03 02:06 ] [ 編集 ]

不意に思い出してまた見に来てしまいました。

何度も何度も競馬の面白さ、不思議さ、暖かさを教えてくれた人でした。

帰ってきてくんねえかな、ホント。
[ 2015/03/03 21:25 ] [ 編集 ]
立札4

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