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ウマスレイヤー 01

【01】


キタノオカ・ファームを突如襲った大爆発。厩舎は燃え、黒煙が周囲を支配していた。
牧草や家屋が燃焼する匂いは皮肉な程に香ばしく、惨劇の光景は遠目には大規模な焚き火にしか見えない。


「みぃ~つけたァ~♪」


廃墟と化した牧場に、甲高い叫び声をあげたのはシャダイのキョーソウバ・エージェント、ケツァルテナンゴである。
黒いメンコの内側に光るギョロリとした目のキョーソウバは、その場にしゃがみ込み、足元に倒れているウマの鬣を
掴んで持ち上げた。
「おい、起きろ。お前が最後だってヨ。」
ケツァルテナンゴの言葉にウマが呻き、目を開いた。


「ジゴクにようこそ~♪」


ケツァルテナンゴが笑った。


「これからお前を去勢するんだァ、いいだルォォ?」


ナムサン!?今、何と言ったのか?去勢すると?
だが、地に伏したウマの意識は混濁しており、恐怖に叫んだり、抵抗する事さえできない。

「何をしている!」
彼らの背後から叱責めいた声が飛んだ。ケツァルテナンゴはウマの鬣を掴んだまま声の主を振り返った。
そこには派手な栗毛に、更にギョロリとした目をしたキョーソウバが立っていた。

「さっさとやれと言っているのだ、早くそのウマを去勢しろ。」
「もうちょっと勿体つけようぜ?アッシュゴールド=サン。コイツが最後なんだろ?」
「ああ、生体反応はそれで最後だ。俺たちを除けばな。」

今回、彼らに課せられているのは後始末ミッションだ。彼ら自身は先ほどの牧場爆破には参加していない。
何故彼らは巻き込まれたウマをこうも入念に去勢するのか?

・・・権力独占の為だ。

メディアはこの惨劇を、不幸な爆発事故としてアナウンスするだろう。
牧場側の管理体制の不備や、漏電による火災などと報道される、それで終わりだ。


「ヒヒヒヒ!!生死の瀬戸際だぞ?ワメケ!!」

ケツァルテナンゴが笑い叫ぶと、鬣を掴まれたウマが静かに呻いた。何と言ったのか聞き取れないケツァル
テナンゴは「アァ?」と聞き返す。

「お・・くべし・・・」
「はぁ?何だか解らねぇよ、命乞いをしろ!!」

ウマの目が焦点を取り戻し、ケツァルテナンゴを見据えた。



「追い抜くべし・・・」
「ゑ?」



「キョーソウバ、追い抜くべし!!」


「グワーッ!?」突如立ち上がり、ウマは信じられない速度でケツァルテナンゴの足元から消えた。
「ケツァルテナンゴ=サン!どうした!」
アッシュゴールドが狼狽える。あまりの出来事にケツァルテナンゴはその場で失禁した。
予想だにしない状況に2頭の統率は失われた。
ウマは首を巡らし、アッシュゴールドを見た。その視線は憎悪に溢れていた。


「キョーソウバ、追い抜くべし!!」


「ヒッ・・・」アッシュゴールドが思わず後ずさる。ウマは近づく。一歩、二歩と。
アッシュゴールドは気圧されていた。自身がキョーソウバにも関わらず、この傷ついたウマを恐怖した。
彼の思考は激しく乱れた。
(キョーソウバを追い抜く・・・?キョーソウバを、追い抜くと言ったのか?
 キョーソウバが・・・俺が・・・追い抜かされる?」

「何だよ・・・お前は一体・・・」
「イヤーッ!!」
ウマが駆け出した!!だがしかしキョーソウバであるアッシュゴールドがただの手負いのウマに負けるわけがない。
しかし!そのウマは一瞬でアッシュゴールドを追い抜いた!!

「オロロロロロー!!」
アッシュゴールドは信じられない事態に嘔吐!吐瀉物があふれる!
「イヤーッ!!」ウマは右回りでアッシュゴールドを追い抜く!「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」ウマは左回りでアッシュゴールドを追い抜く!「グワーッ!!」


アッシュゴールドは痙攣しながら後ずさりした。鬣はボサボサに乱れ、毛ヅヤを失い、さながらカイバめいていた。
「アバッ・・・こんなこと・・・俺は・・・俺はキョーソウバなのに!」
「キョーソウバ!追い抜くべし!」
ウマは前脚を掻き込み、助走を付けると再び一気にアッシュゴールドを抜き去った。


こうなるとキョーソウバとしての威厳は保てなくなる!!
「アバーッ!!サヨナラ!!」
アッシュゴールドはしめやかに掲示板外に消えた!!



ウマは深く息を吐き、背後を振り返る。そしてケツァルテナンゴを見た。
失禁が止まらず立ちすくむケツァルテナンゴは、後ずさりするのが精一杯だった。
「お前は・・・お前は何だ・・・」
震えた声で尋ねるケツァルテナンゴに、アッシュゴールドの時と同様にウマが近づく。一歩、二歩と。
「こここ、こんな話、上から聞いてねぇ!!」

ウマの傷から出た血が彼の頭部に集まってくる。そして目からも血を流し始めた。
ひどい出血ではあるが、ウマは平然としていた。やがてその血は額に大きなクロスを描き、その周囲にはサックスブルーの
メンコが浮かび上がった・・・キョーソウバのメンコの姿に!!

あまりのことにケツァルテナンゴは呆然と一部始終を見ているしかなかった。
ウマがまた一歩踏み出す。


「ドーモ。」


ウマがケツァルテナンゴにオジギした。




「ヒットザターゲットです。」




ケツァルテナンゴは混乱した。
(何者だ?何が起こっている?ターゲットを射抜く者だと?
 さっきからコイツはキョーソウバを追い抜くと言っているが、俺も追い抜かれるのか?)
彼は震えながらアイサツを返す。

「ド・・・ドーモ、ヒットザターゲット=サン。ケツァルテナンゴです。」

レースに臨むキョーソウバにとって、アイサツは神聖不可侵の行為。
競馬四季報にもそう書かれている。
アイサツされれば返さねばならない。



アイサツを終え、ケツァルテナンゴが本題を問い正そうとする。
「貴様・・・貴様は何をするつもりだ!?ヒットザターゲット=サン!!」
「追い抜く。」
「ナンデ!?」


「オヌシがキョーソウバだからだ。」


ケツァルテナンゴの問いは確かにナンセンスだった。つい先程、彼を理不尽にも去勢しようとしていたのは
ケツァルテナンゴのほうである。ヒットザターゲットがゆっくりとまたケツァルテナンゴに近づく。

「ヤメローッ!!」
ケツァルテナンゴは恐怖の叫びと共にハミを取った。「イヤーッ!」トモを全身全霊で駆動させ、彼を
突き放しにかかる。だが、もう遅い!既に内側にスルリと付けたヒットザターゲットを相手に成す術は無い!
真横に付けたヒットザターゲットが言う。

「トウスポを詠むがいい、ケツァルテナンゴ=サン!!」

恐怖と絶望にとらわれたケツァルテナンゴは、咄嗟にトウスポなど詠めなかった。
彼はただ震えた。

「イヤだ、追い抜かれたくない!こんなの間違いだ!」

「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」
ヒットザターゲットがトドメのステッキを入れる。一瞬でケツァルテナンゴは抜き去られた。


「サヨナラ!!」
あっという間に8馬身の差をつけられ、
ケツァルテナンゴはしめやかに掲示板外に消えた!!




ヒットザターゲットは数秒、物思いに沈むように、その場に立ち尽くしていた。
廃墟となった牧場を煤臭い風が吹き抜け、彼の鬣をくすぐった。
遠くから消防車のサイレンが聞こえる。彼はその場を走り去った。



~つづく~




※書き終えて一言 「なんだこれ」



[ 2015/06/19 00:13 ] ウマスレイヤー | TB(0) | CM(12)

仕事の疲れが癒された…んな訳ない!
[ 2015/06/19 00:34 ] [ 編集 ]

えーーー・・・・・

なんだこれ!?
[ 2015/06/19 00:36 ] [ 編集 ]

・・・・・なんって言うか

見すぎです、最早重症の域ですw

しかし、アッシュゴールド=サンの小物感が半端ないんですが・・・・・
[ 2015/06/19 01:12 ] [ 編集 ]

ワザマエ

アイエエエ!!キョーソウバ、キョーソウバナンデ!?
[ 2015/06/19 02:42 ] [ 編集 ]

え~っと

・・・お疲れさまっしたm(_ _)m

お薬もらいに行きましょうね

でも笑った(≧∇≦)
[ 2015/06/19 08:31 ] [ 編集 ]

つ、続くってかいてある
[ 2015/06/19 10:38 ] [ 編集 ]

お疲れ様!

いつも楽しませて頂き
本当にありがとうございます…

でも
お仕事も多忙そうですので
身体はお大事にして、
余り無理をなさらず様に♪
[ 2015/06/19 13:53 ] [ 編集 ]

な、なんと! シショウ=サンの執筆ジツがハードお勤めとアニメイシヨンと
ケミカル反応を起こし、すさまじいアトモスフィアを醸し出しだすほどまでになっている…。

ニンジャめいた執筆ジツのすさまじき威力が、
読者にKRS(キョーソーバーリアリティショック症状)を引き起こさせる!

しかし、こ、これほどまでとは…。
グワァー!!
サヨナラ!
[ 2015/06/20 00:07 ] [ 編集 ]

これは7月ラジニケ賞でアッシュ君がやってくれるフラグと受け取ります
[ 2015/06/20 00:08 ] [ 編集 ]

そういや…

前にコメした時にニンジャスレイヤーの漫画が掲載されている雑誌名を間違えていたなぁ。ヘルシングとドリフターズはヤングキングOURSで、ニンジャスレイヤーはコンプエースだった。

さて、お師匠さん自身「なんだこれ?」との事ですが、ストレス解消になっているのなら宜しいんとちゃいます?
リアルで会話中に「アイエー」とか言い出さないうちに、ストレスは発散させておいてくださいなw
[ 2015/06/20 06:50 ] [ 編集 ]

あぁ…、まさにそんな感じで通さんのオフレコ馬券を有無を言わさず紙クズに…。
ストレスの捌け口として、オフレコニンジャソウルを宿したオフレコバ=サンが、フラグニンジャソウルを宿したシショウ=サンに完膚無きまでにやられるシーンは見ててゾッとしましたね。

『(仕事)みぃ~つけたァ♪』、『(休みなしの)ジゴクにようこそ~♪』、『お金儲けなんだ、いいだルォォォ!?』など、私は師匠の方がしっくりきますね。
[ 2015/06/20 22:38 ] [ 編集 ]

真剣に読んで師匠が相当ストレスが溜まってるのが伝わってきました😨
ただ…息抜きで書いたものが結構な長編になってますが…弟子ちゃんも発狂してなきゃいいんですがね😅
[ 2015/06/21 00:16 ] [ 編集 ]
立札4

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