【04】無人バケン・バーは、ネオフナバシの下層モータルにとって典型的な娯楽施設だ。
大衆が好むウインズの様な喧騒は無く、他人と関わることもない。
無人が故にコストが削減できるのもさることながら、それを消費者に還元しているのが
最大の魅力であろう。要はブックメーカー方式なのである。
勝負師同士の純粋な勝負の場だからこそ、固い時はより固いオッズにもなるが、波乱が起こる時は
より破格のオッズにもなる。流されやすいもの、己が道を行くもの、その敷居はウインズよりも低くも
あり、高くもあるのだ。個の勝負の場としての意味合いは無人バケン・バーの方が強いであろう。
今日も無人バケン・バーには、人との関わりに疲れた男たちが集う。
「誠実」と書かれたノーレンをくぐると、そこには一人用のカウンターがズラリと並んで
いる。大体の無人バケン・バーはこの様な横長の作りになっている。
下層モータル相手の商売なので、店舗は一様にして不潔である。管理がしっかりしている
のはオッズコンピュータだけで、店内清掃員は雇用されていない。
足元には予想が書かれたシンブンシ、ハズレバケン、ウンコなどが散乱している。
壁に貼られた「ゴミはゴミ箱に」という標語が虚しさを増幅させているが、客たちにはどうやら
全く関係ないようだ。
今日も一人、また一人と眼の死んだ男たちがノーレンに吸い込まれていく。
彼もその無人バケン・バーの常連に、つい最近なったばかりだ。
空席に腰掛け、握っていたシンブンシをカウンターに広げると、今度はポケットから三枚の
百円玉を取り出して、カウンターに設置された「百円玉のみです」と書かれた現金投入スリットの
前に置いた。この街の下層モータルは紙幣など持っていないのだ。
虚ろな眼でシンブンシにペンを走らせると、百円玉を一枚スリットに流し込み、タッチパネルを
素早く操作して音声認識システムに言った。
「・・・ワイドだ。」彼、マツモト・ヒロシの馬券師としての夢は、
おおかた潰え、狂ってしまった。元々、彼は腕利きのトラックマンであった。
しかし、馬券師としての道を歩もうと更なる高みに登るべく向かった先で、彼は
酷使されノイローゼになり、過労死寸前まで追い詰められた。
その結果、ボロのように見放された彼のソウマ・アイは著しく低下してしまったのだ。
彼の予想はそれまでの輝きを失い、そのホンメイは「ヒロシズ・インパクト」と揶揄される程にまでに
成り果て、現在のケイバ・シティ・ジャンキーに彼の予想を信用する者は誰一人として居なくなってしまった。
むしろ今となっては昔の話、彼の存在自体が最早無かったかの様になり、周囲に気付かれもしない。
万が一気付かれても恥の上塗りであるが為に、彼は無人バケン・バーを訪れる。
おお、見よ、先ほどのワイドも見事に3、4着である・・・彼は再び無感情にシンブンシにペンを走らせると、百円玉を一枚スリットに流し込み、タッチパネルを
素早く操作して音声認識システムに言った。
「・・・ワイドだ。」今のヒロシに残されているのは、定期購読になっているエイト・シンブンだけだ。
エイトは、維持費もかさみ、アルバイトで稼いだ日銭はほぼ全てエイトのシューキンババアに回収される。
今月こそ断ろうと何度思ったことか、しかしヒレツ!シューキンババアは回収の都度、センザイやオモチで
彼を誘惑する。それでも購読を拒否しようとすると、彼女は放蕩息子の話を持ち出し、ここで契約が取れねば
家族一同路頭に迷うと、涙ながらに懇願するのだ。
そんなものはブラフだと解っている。だが結局断りきれず、未だに彼はエイト・シンブンを手放すことができない。
おお、見よ、このワイドも見事に3、4着である・・・彼は再び無感情にシンブンシにペンを走らせると、最後の百円玉を一枚スリットに流し込み、タッチパネルを
素早く操作して音声認識システムに言った。
「サンレンタ・・・
いや、ワイドだ・・・」本当に買いたいのはワイドではなくテイスティ・ミョウを豊富に含んだサンレンタンだ。
だが今はそんなチャレンジができる程の自信が、彼には存在していない。このテイスティ・ミョウにニューロンを
支配された経験が無いわけではない、一度のサンレンタンでアドレナリンがフツフツとスキヤキめいて沸き立つ
感覚は確かに甘美だ。ワイドでは味わえない。
だが、世の中そんなに甘くはないと、彼は悟ったつもりだった。
・・・しかし皮肉なものである。こういう場合に限りサンレンタンとは
当たるものなのだ。まさにショッギョ・ムッジョとはこのことだ。あの時、
音声認識システムがサンレンタンを認識していれば・・・ワイド切り替えなどという弱気さに、自身のコシヌケ具合を呪いながらヒロシはほくそ笑んだ。
多分、己がサンレンタンを買っていたら、あの3着のハナ差は裏返っていただろうと・・・
トラノコの百円はなんとか五百円になり、彼は深追いすることなくその場で天を仰いだ。
別に、今はバケンで生計を立てているわけでもない。これは馬券師への未練がそうさせているのだ。
残された道への利己的なウン・テストである。しかし・・・
腐っていても何も始まらない。今度こそシューキンババアの契約を破棄しよう。
このバケンが最後だ、恐らくブッダ・オオカワのおぼしめしだ。サンレンタンにしておけばよかったなんて、
馬券師を目指す者を嘲笑う結果ではないか。これを換金したら、次の仕事を探しに行こう。
そう考えて席を立とうとしたヒロシは、偶然にも隣の二人の客が仕切り板越しに話している
会話の内容を聞いてしまったのだ。
「本当ですか?」
「ええ、本当です」
その工場労働者と思しき二人の客は、酒に酔った勢いか、ウカツにもかなり大きな声で
密談を行っていた。
「悪いウマヌシへの襲撃ですか?」「はい」
「誰でも参加できるんですか?」「はい」
「炊き出しもありますか?」「ヨウブンドリンクの支給があるらしいですよ」
ヒロシは反射的に席を立ち、二人の肩に手を回した。
「なあ、あんたがた。俺もそのウマヌシ襲撃ってやつに参加
したいんだけど、どうしたらいいんだい?」++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ネオフナバシ南部 ホウテン第二地区。
労働者をスシ詰めにした威圧的なバウントラックが往来し、吐き出される排気ガスが
闇の渦巻く都市の下水溝を湯気めいて流れていく。
まさに競馬四季報で予言されたヤオチョーの世の一側面だ。
ハズレバケンが風に舞いストリートを飛び交う中、1頭のキョーソウバが灰色のコンクリートスラム街の
屋上を飛び渡っていた。
キョーソウバの名はグランデッツァー。シャダイ・シンジケートの斥候だ。
彼らはウマソウルに憑依され、闇に落ちた者たちである。グランデッツァーが手にしたものは、通常の
ウマの三倍以上の脚力。だが、その彼がよもや敵から追跡を受けようとは、彼自身ですら予想だに
していなかっただろう。
しかしグランデッツァーは憔悴していた。何者かが自分をつけ回している。誰かに監視されている。
その焦りから、彼は屋上から身を隠す為にコンクリートスラムの地上に降り、ほの暗い地下馬道に潜り込んだ。
しかし運悪く、地下馬道はその先で行き止まりになっていた。
そこに・・・
「Fumikitte Jump!!」禍々しくも躍動感のある掛け声と共に、彼を待ち伏せていたかのように地下馬道の天井にある
通風孔を突き破って、もう一頭のキョーソウバが飛来し、グランデッツァーの退路を塞ぐ。
闇の中で対峙する2頭のキョーソウバ。
彼らはお互いの中心点を軸にして、円を描くようにじりじりと横歩きし、スタートの間合いを探る。
構えにスキを見せぬまま、通風孔から現れたキョーソウバが言い放つ。
「諦めるがよい、グランデッツァー=サン。オヌシにもう逃げ場はない。」
「どうして俺の名を!?貴様はもしや、ヒットザターゲット=サン!!」「ドーモ、ヒットザターゲットです。」
「ドーモ、グランデッツァーです。」アイサツをしながらもグランデッツァーは考えを張り巡らしていた。
このキョーソウバの話は最近よく耳にする。シャダイのキョーソウバを全て追い抜くなどというビッグマウスを
叩き、組織に仇なすサックスブルーに赤いクロス・メンコのキョーソウバ。しかしてそのテマエは、ビッグマウスを叩く
だけのことはあるものだと聞く。
既に間合いは、このキョーソウバが現れた時点で相手にある。ならばここはアンドー・サシミの言葉を思い出せ!
「肉。切らしといて骨狙うと、相手は倍、痛がる
かもしれんね。ようできてるわ。」だが、アイサツをし終えてまず動かんとしたグランデッツァーの計画は脆くも崩れる。
それは0.02秒の攻防!ヒットザターゲットの右前がムチの様にしなり、いとも簡単にグランデッツァーは交わされた。
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
たまらず差し返そうときびすを返すグランデッツァー。
まだステッキを入れれば反撃はできるはずだ。
しかし機先を制する様に、ヒットザターゲットの右前がムチの様にしなり、再びいとも簡単にグランデッツァーは
突き放された。
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
まるで逆転のスキを与え、抵抗してきた獲物をいたぶるかの様なヒットザターゲット。
たまらずグランデッツァーが物言いをする。
「ま、待て、ヒットザターゲット=サン!俺を追い抜いても組織が貴様を・・・」
だが有無を言わせず、ヒットザターゲットの右前がムチの様にしなり、再びいとも簡単にグランデッツァーは
突き放された。
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
・・・ヒットザターゲットが接近する。
「洗いざらいしゃべってもらうぞ。シャダイのことを。」
だが・・・
「・・・サヨナラ!!」グランデッツァーはそう言い残すと、彼は自らレースを捨てる様に馬群に飲み込まれていった。
ヒットザターゲットが忌々しい顔で舌打ちする。
・・・ヤラズだ。邪悪なキョーソウバ組織、シャダイの秘密は聞き出せず、再び闇の底に沈んでしまったかの様に思われた。
だが、ヒットザターゲットはグランデッツァーの通過した芝の上に何かを発見し、手を伸ばした。
マークシートである。グランデッツァーは、これを何者かに届けようとしていたのだ。
イロハをマークされたマークシート。マークされた文字を順を追って読むと、それがシャダイの次のミッションであることが
判明したのだ。
「コヨイ ホースケ シウゲキダ」~つづく~
※つづくよ!!ザンネン!!
http://tiltowait0hit.blog.fc2.com/blog-entry-968.htmlウマスレイヤー 04
散乱するウンコ!
テイスティ・ミョウ!!
フミキッテジャンプ!!!
師匠はもうオシマイだ!!!!
週末の更新がウマスレイヤーしますか? おかしいと思いませんか? あなた
キタノオカ、シャダイに続くのはソースイ率いるダイアカかと思いきや
まさかのホースケ!!
ということで、ここらで「クノイチの入浴シーン」が観たいです。
(ニンジャスレイヤーにそういうシーンがあるかどうかは存じない)
お師匠さんの予想記事を期待されていたのであろう事は理解出来ますが、現在お師匠さんは本業が大変忙しく週末のリアルタイムでの記事更新は出来ない状況です。
今の所ウマスレイヤーが、お師匠さんがネタとしてブログを書こうとする力になっており、それも平日に書いておいた物を予約で更新されています。
週末に予想記事が見られない物足りなさを感じられるのは理解できますが、秋口あたりまではお師匠さんの本業がお忙しい事を承知いただきたいと思います。
ラジオNIKKEI賞に弟子ちゃん好みの流星のロジチャリスが出てきますが、活躍を期待したいです。春シーズンを休養でクラシックには出られなかったですからね。
今回も笑えた(≧∇≦)
でも・・・
いろ~んな所から怒られるそう(^。^;)
ドーモ、飛天龍翔=サン。ビホルダーです。
まことにお恥ずかしい限りです、よくよく考えればすぐわかることなのに。
ここの読者さん=ニンジャスレイヤー読者じゃないんですよね。
「おかしいと思いませんか? あなた」は忍殺語、書籍版ニンジャスレイヤーの中で
よく使われる語句や言い回しなんです。オシショー=サンは重篤なニンジャヘッズで
あると文面やツイート見てて解りますから。(ロブスターで盛り上がるとか重症)
私としては「週末に予想じゃなくてウマスレイヤーとはクレイジーだぜ」的な意味で
コメントしたつもりでオシショー=サンには伝わると思うのですが、知らない方が見たら
スゴイ・シツレイ!
私自身、競馬もニンジャスレイヤーも好きだし、このウマスレイヤーは両方知って
いる私にとっては奇跡みたいなものなので、嬉しくなって忍殺語使っちゃいました。
気分を害してしまってごめんなさい、ケジメとしてセプク致します。グワーッ!!
なんか面白い、いや、とても良いですね
お仕事お忙しい中有難うございました
これからも、期待してますよ‼︎
シショウ=サン
テシ=サン
えっ!?ヤラズは…、ノリ=サンの十八番のはずでは…(シイ=サンも使用可能)。次はホースケということですが、ビジン=チャンやタッチデュール=サンの登場があるのでしょうか。イサキ=センセイの登場もあるかもしれませんね。
私…、シャダイさんのことが大好きだから胸が痛いなぁ。シャダイさんはそんなにワルモノじゃないやいっ!!
なにこれおもしろい…
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