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ウマスレイヤー 05

【05】


「シャダイ=サン、本日は誠にお世話になりました。クラブ会員の暴徒化はおかげで沈静化致しました。
 蒸し返す無粋な輩は居ないでしょう。」
「ムハハハハ!気にするな、カタギ=サン。ニンジンサンにはいつも、無理な注文を通させているからな。」


談合ルームにシャダイの高笑いが響き渡った。

某日、ネオフナバシの経済中枢、ノーザン・ステート。
その最上階はシャダイの拠点となっており、一般人の立ち入りは固く禁止されている。
ここに足を踏み入れられるのはシャダイ直属のエージェントと限られた主要取引先の人間だけだ。
取引先の者は謀反を起こされぬよう、厳しいボディチェックを受けることになる。
暗い談合ルームで、シャダイと話をしているのはタブレット端末ただ一つを携えた、素っ裸の
ニンジンサンの役員である。

ニンジンサンはシャダイと深く関わりを持つマルチ企業だ。この日はニンジンサンの運営するブラック競馬予想サイトの
有料クラブ会員が、あまりの予想成績に悪さに徒党を組み暴徒化し、カタギでは手に負えずシャダイ・キョーソウバの
力により鎮圧。キョーソウバの力を以てすれば実に容易いことではあるが、それができるのは実際シャダイのみである。

「ときに、その件の礼としての手土産があると聞いたが?」
「はい、謀反の情報でございます。」
「ほお・・・」

シャダイの目が険しく細まり、地の底からマグマが沸き立つ様な野太い声で相槌を打つ。
カタギである役員はその威圧感に膝を震わせながら正気を保つのがやっとだ。

「ホースケサン・ウマヌシが、当社のバイオ・カイバとウマの購入を拒否致しまして。」
「ほほう。まるでキタノオカ・ファームの様ではないか。」
「はい。しかもホースケサン・ウマヌシは、これまで主に当社系列の払い下げのウマを購入して運営して
 いたのですが、これまで購入したウマを今後は生産に回し、地方競馬市場の独占に向けて動いて
 いるのです。」
「つまり、以前購入したウマを返さぬと?」
「はい。自社で生産するつもりです。これをご覧下さい。」

カタギがタブレットを操作し、ホースケサンの月別成績グラフを壁面にプロジェクションする。
ニンジンサンの売上が下がるのと比例してホースケサンの勢力が拡大しているのが一目瞭然である。
それはつまり、シャダイにも影響するものなのだ。

「ムハハハハ!愚かな奴らめ。インガオホーというコトワザを知らぬと見える。」
シャダイは絶大な自信と狡猾な知性をうかがわせる言葉で答えた。
「よろしい、ホースケサン・ウマヌシを襲撃する手はずを整えよう。貧民を扇動しウマヌシを襲わせるのだ。
 ニンジンサンにも協力願いたい。」
「ヨロコンデー!」
静かな殺気をたたえたシャダイの視線を受け、カタギは失禁しつつも平静を装い続けた。

「計画の遂行は迅速にな。なに、キョーソウバの力を以てすれば容易い。プランは明後日にお届けしよう。」
「アリガタヤー!」


こうしてホースケサン・ウマヌシへの襲撃が企てられた。
そして後日、同談合ルーム。同じく全裸のカタギがシャダイのもとを訪れていた。


「プランは先日送った通りだ、必要物資の協力は可能であろうな?」
「ヨロコンデ!違法薬物ミカポンを混入させたヨウブンドリンクをビバレッジ部門から500ダース提供させて頂きます!
 これを服用した貧民どもはケミカル反応を起こし、痛みも恐れも知らぬ暴徒軍団が完成致します!」

ニンジンサン・ビバレッジの主力製品ヨウブンドリンク。老若男女問わず絶大な人気を得ている商品だ。
このドリンクは一般流通こそしているものの、僅かに麻薬的有効成分が含まれており、用法用量を
守らず摂取すると非常にハイな気分になれる。

自信満々に話すカタギに対し、シャダイの顔が曇る。
「500?」
たったそれだけかと言わんばかりに、口調が突然カタナの様に切れ味鋭いそれに変わった。
命の危機を感じたカタギは、素早く自らの過ちを認めた。

「アイエエエ!大変失礼いたしました、1000ダースの間違いでございます!」
「ムハハハハ!1000!ムッハハハハハハハ!!」

シャダイは再び温和な口調に戻り、満足そうな笑い声を発した。カタギはほっと胸を撫で下ろす。
だが、それから数秒も経たぬ内に、再びシャダイの目元から笑いが消え、恐るべき暴君の目へと変わった。


「何かあったか・・・」


振り向きもせず、シャダイが呟く。するとシャダイの後ろに伸びる影の中に、いつの間にか一頭の
キョーソウバが立て膝の姿勢で控えているのだった。あの、猛禽類が如き眼をしたキョーソウバだ。

「報告致します、グランデッツァー=サンが戻りません。」
「・・・計画の遅れは許されん。奴が戻らぬなら、オヌシがヴァンセンヌに伝令を届けよ。」
「・・・御意。」

キョーソウバが再び影の中に消える。
「不安にさせたかな、カタギ=サン?」
うってかわって、シャダイが猫を撫でるように優しげな口調で言った。
「襲撃計画は必ずや実行に移される。ドリンクの準備を頼んだぞ。」
「ヨロコンデー!!」
出っ歯の小男はいそいそと談合ルームを出た。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


ヒロシと二人のヘルメット工場労働者はウマヌシ襲撃を呼びかけるチラシの地図に従って、ネオフナバシの
雑然とした繁華街を歩く。
「あたる」「これで食べ放題」「不正一切なし」、下品な配色の数々のネオンが夜の闇に踊り、路上では呼び子が
「アタルヨー、あっちよりアタルヨー、これはオフレコダヨー」と必死に客寄せをしている。

「ウマヌシ襲撃とは、物騒な世の中になったものだ」と、ヒロシが他人事のように呟いた。
「何がおかしいものですか」と労働者の一人がニヤつきながら返す。
「このヤオチョーの世ではそんなもの、チャメシ・インシデントですよ」
まるでオノボリのように諭されたことに対して、ヒロシはいささか不満を覚えながら、こう返した。

「待て待て、不思議なのはホースケサン・ウマヌシが標的ということだ。確かに非人道的なウマの利用法に
 映るかもしれないが、あのウマヌシが居ることにより成り立つ地方競馬界と、それにより生きながらえる
 ことのできるウマや人間がどれだけ居ることか。」

「まあ、それはそうですが」と、既に手持ちのサケでほろ酔い顔の労働者。
「今回の襲撃は何でも奪い放題らしいし、牧場を襲撃するのではなく対象はウマヌシです。
 だから、まあ、いいじゃないですか。」
これを聞いたヒロシの中に強い嫌悪感がこみ上げる。表情にこそ出さないが、彼はこの無思慮な連中を
侮蔑した。生かされる者を預かる存在の気持ちも知らないで、と。


そう、ヒロシが過去に酷使されていたのはホースケサンだったのだ。
そこでの経験は地獄ではあったが、我慢さえすれば生きながらえることができる地獄。
ヒロシは高みを求めての勤務だったが、それが故に破綻した。
ひょっとしたらホースケサンは、このヤオチョーの世に無ければいけない存在ではないのか・・・


このように、ヒロシの中ではまだ葛藤が続いていた。本当にかつての勤め先であるホースケサン・ウマヌシの
襲撃に加わるべきかどうか、彼はまだ決めかねている。そもそも、そんな事が本当に起こるのかを確かめに
来た、という気持ちが強い。
そうこう思案している内に労働者が「あそこですかね」と言った。

そこには地下駐車場に通じるエレベータがあり、手前にはにこやかな笑みを浮かべた黒服の二人組が
立っていた。背丈は同じ、体格も同じ、そのにこやかな笑みも、全てが奇妙なほどに同じ。まるで双子だ。
彼らは「ウマヌシ関連」と書かれた立札を持っている。
黒服たちにチラシを見せると、彼らはにこやかな顔で3人の労働者を品定めするように観察した。
それからエレベータのボタンを押し、ヒロシらに下に行くように無言で促した。
ガシャコンっという音を立て、まるで出来の悪いケイバ・ゲートのようにエレベータのドアが開く。
トラックマン時代の様な、鋭い直感が急にヒロシを揺さぶる、「何かおかしいな」と。
だがもう遅かった。
「わくわくしますね」「ヨウブンドリンクも支給ですからね、飲み放題らしいですよ」
ヘルメット工場労働者の二人は呑気に構えていたが、どうやらオノボリなのはこの二人の様だ。
閉鎖されているはずの地下駐車場に到着すると、再びガシャコンっとエレベータのドアが開いた。

薄暗い照明と埃っぽい湿った空気、そして労働者達の放つ汗やタバコやサケの臭いが、三人を迎える。
地下駐車場には既に数百もの人間が集結し、ごった返していた。奥を見やれば、二十台近くの大型
バウントラックが並び、駐車場出口のスロープ手前で縦列待機している。
予想外の規模に驚き、ヒロシたちはエレベータの中でしばし立ち尽くした。

意表を突かれたが、その群衆の中に歩み寄る。どうやらヨウブンドリンクの支給待ちらしい。
ヒロシたちの前には、頭髪を黄色と緑に染め分けた四人のサイレンススズカニストが並び、狂信的に
過去の英雄への賛辞を繰り返していた。一方で後ろには黄色と水色の衣装を身にまとったミーハーな
ウオッカーズが甲高い声をあげて騒いでいる。
彼らが「どちらが強いか」という口論を始めたら、恐らく聞くに耐えない禅問答がオールナイトで
繰り広げられるだろう、まさに一触即発の状態だ。

キンキンに冷えてやがるヨウブンドリンクの山が、駐車場の中央に運び込まれる。支給の開始だ。
駐車場には大音量でクラブミュージックが流れ出し、ウマヌシ襲撃前というよりも不潔なパーティピーポーの
不法集会のようである。
参加者たちの目がドリンクに釘付けになるのをよそに、ヒロシは冷静にこの地下駐車場内の様子を観察していた。
どうやらここに集められているのは、肉体労働者、ホームレス、マケグミ・サラリマン、ユトリ失敗者、貧困オタク、
チンピラ、ケイバ・ブロガーなどなど・・・実に多種多様ではあるが、ほぼ下層市民たちが占めている。

ヒロシと共に来た二人の労働者は早速、ヨウブンドリンクに少量の安ウイスキーを加え、ハイボールに
して呷った。喉を鳴らしながらグイグイと呷る。

「オットットット!たまりません!ヒロシ=サンも一杯やりませんか?」
「聞き忘れていましたが、ヒロシ=サンはどんなお仕事をされているんですか?私たちは白いヘルメットを
 ピンク色に塗ったり緑色に塗ったりする、くだらない仕事をやっています。」

ヒロシは労働者たちの相手をせず、支給されたドリンクを飲みながら、この異様な場所から逃げ出す
隙を伺った。ヨウブンドリンクの常習性を持っていないヒロシは未だに冷静であった。
「やはりおかしい。この規模は一体なんだ?気になりはしたものの、面倒はごめんだぜ・・・」
考えを巡らせるヒロシをよそに、駐車場内のボルテージはドリンク効果により上がりはじめた。
案の定、先ほどのサイレンススズカニストとウオッカーズは口論になり、結果の見えない禅問答を
ぶつけ合い始めてしまった。踊りだす者、奇声を上げる者なども居る。

そこへ不意に、派手なLED照明で「怒り」と側面に配された威圧的な大型トレーラーが、彼らの前に
乗り付けられた。派手なスモークを伴って荷台が開き、ウッドチップ敷きの特設ステージが出現する。

ズンズンズンズンズンズンポーウ!
ズンズンズンズンズンズンポーウ!


よりサイケデリック・トランスめいた音響が強くなり、参加者たちの酩酊度を進める。
出現した特設ステージの背面には、荷台の側面にあったものと同様のLED照明で「怒り」「激しい」「怒り」と
交互に点滅を繰り返していた。
そして、ステージ中央に影が現れる。どうやら一頭のウマのようだ。


「ドーモ」


重厚なウーハーの効いたスピーカーを通して、ウマが参加者に礼儀正しくアイサツをする。


「はじめまして。私の名前はヴァンセンヌです。」


彼の両後脚には痛々しく分厚い包帯が巻かれている。インパクトのある登場と、その哀れな出で立ちに
参加者の目が彼一点に集中するのを確認すると、音楽の音量が下げられ、ヴァンセンヌは語りだした。

「今回皆さんに集まっていただいたのは、あの憎い憎いホースケサン・ウマヌシに復讐を果たす為です。
 私の哀れな身の上をお話しさせてください。

 私は、数ヶ月前までホースケサンの所有ウマでした。安い賃金で強制労働を強いられ、賞金はロクに
 手元にも来ず、貧困な生活を送っておりました。
 使い続けられた上に、個人の私腹を肥やそうとするホースケサンの重役たちは設備投資をせず、老朽化した施設の
 中で疲労に喘ぐ私は、スシ詰めの様な牧場厩舎で転倒してしまい、両後脚の腱を痛め、走れなくなりました。
 わずかな退職金とカイバを渡され、私は引退させられました。
 私と同じような境遇の元ホースケサン所有ウマが、ほかに何千も居ると聞きます。

 しかし私は幸運でした。その退職金でサンレンタンを買い、爆穴大的中し・・・運良く、本当に運良くカチグミに
 なれたのです。今回皆さんにお配りしたヨウブンドリンクも、私のポケットマネーから出したものです。」

スピーカーのエフェクトが強まり、扇情効果は更に高まる。
ヒロシはヴァンセンヌの言葉に感銘を受けた。実存の意味を失いかけていた自分という点が、不意に無数の
点と繋がり、今ならどんなレースでもサンレンタンを当てられるような高揚感を味わった。だが・・・


ナムサン!彼は気付いていないが、その衝動の大半はドリンクに
混入された違法薬物、ミカポンによるケミカル反応なのだ!!



ミカポンは、その名の通り、欲望の開放を促す危険薬物である。これを摂取した者は善悪の判断も
無しに直情的になってしまうのだ!
LEDが激しく点滅する中、ヴァンセンヌが畳み掛けるように語る。


「ホースケサン・ウマヌシは暗黒メガコーポです。
 彼らの救済措置に見えるウマ雇用は偽善!
 皆さん、共に打ち倒しましょう!」



これを聞いた参加者たちのケミカル反応は最高潮に達した。ヴァンセンヌがその様子を見て不敵に微笑む。
洗脳完了だ、ホースケサンへの敵意の塊となった暴徒集団が、今ここに完成した。
急性ミカポン中毒者たちは理性なき猛獣と化し吠え猛り、にこやかな黒服たちに促されバウントラックに
分乗し始めた。

自制心を働かせてドリンクを一本しか飲んでいなかったヒロシは、急性中毒の手前で踏みとどまっていた。
だがもはや、無人バケン・バーに居た頃の枯れた静けさは微塵も漂わせていない。
理性が吹き飛ばなかったからこそ、ミカポンのケミカル反応が具体的に彼のニューロンを駆け巡る。
今、彼は敗北感に打ちひしがれていた、自身の予想に対する敗北感に。

彼の脳内では、無難かつ理論的なそれまでの自分の予想方法が炎によって焼き払われていた。
その代わりに、暴力的ながらもリアルな躍動感に溢れた予想手段の数々が、恐ろしい程鮮明に浮かび
上がってきていたのだ。

「俺のバケンは、なんと無価値で没個性だったことか!」

彼は心の中で苦々しく叫ぶ。
だが敗北感と同時に、ミカポンの化学反応による新たな勝利の希望が沸き上がってもきていた。



「俺はこの襲撃で鬼になろう。そこで見たものを
 糧とし、予想に活かすのだ!!」




~つづく~


 

[ 2015/07/11 00:24 ] ウマスレイヤー | TB(0) | CM(6)

いちいちヤバいんですけどwwwwwwwwwww
[ 2015/07/11 00:54 ] [ 編集 ]

違法薬物ミカポン 最高!

週末が楽しみです。
[ 2015/07/11 06:37 ] [ 編集 ]

越えた

ヨウブンDを飲んだからか、ミヤベミユキ=サンを越えてる気がする...

[ 2015/07/11 08:16 ] [ 編集 ]

そろそろヤバくねwwwww
[ 2015/07/11 10:30 ] [ 編集 ]

コレヤバイタノシイ
[ 2015/07/11 23:55 ] [ 編集 ]

はじめまして。南関魂にいい写真ありまっせ。一瞬だけ何かしらのジョッキーズシリーズを無敗で制したように見えましたが。
[ 2015/07/12 22:58 ] [ 編集 ]
立札4

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